ウニ養殖で東北復興 いわき市の鈴木さん、沖縄の技術学ぶ


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県シラヒゲウニ養殖企業組合の我如古武さん(右)からウニの陸上養殖技術を学ぶ鈴木一好さん=5日、うるま市

 【うるま】東日本大震災の津波で港湾施設が破壊され、その直後に起きた福島第1原発の事故で放射性物質が流れ出し、漁のできない海になった福島県いわき市。その海でキタムラサキウニを採っていた同市漁業協同組合理事の鈴木一好さん(61)が、うるま市の県シラヒゲウニ養殖企業組合(名城政幸理事長)から養殖技術を学び、シラヒゲウニを東北で陸上養殖することに挑戦し始めた。課題は多いが、「立ち止まってはいられない」と意気込む。

 キタムラサキウニがホッキ貝にこんもりと盛られたウニの貝焼きはいわき市の名産品だが、いまはほとんど出回らない。全てが津波に流され、地盤沈下した市内11カ所の全漁港の再建は遠く、原発事故の影響を受けた海では試験操業しかできないからだ。それでも、復興を諦めない鈴木さんを、県産業支援センターの事業が、沖縄県内で独自にシラヒゲウニを陸上養殖し、放流事業を行う同企業組合と結び付けた。
 ウニの養殖技術を持たないいわき市漁協からすれば、同企業組合の取り組みは革新的だった。さらに、キタムラサキウニは出荷まで5~8年かかるがシラヒゲウニは約1年。東京電力の漁業補償だけでは食べていけず、陸の仕事を始めて漁から遠ざかる組合員をつなぎ止めたい。鈴木さんは養殖技術を学ぶため、4日に来県し、同企業組合で養殖を担当する我如古武さん(61)からノウハウを学んだ。同企業組合もうるま市の協力を得ながら養殖施設を拡大させ、東北の復興のためにも鈴木さんを支援する考えだ。
 ただ、温暖な地域のシラヒゲウニを、寒冷な東北で陸上養殖することの課題は多い。大量の餌代や水温管理の電気代の費用は高く、県栽培漁業センターは「現実的でない」と指摘する。新しい技術に保守的ないわき市漁協組合員の理解もこれからだ。
 「それでもできることはやってみなければ」。震災で多くの人が亡くなり、生き残った人も原発事故で住む場所を追われた。原発事故による海の汚染や、東電からの補償金の有無と金額の違いが、温かかった人間関係を冷ややかで複雑なものにしている。鈴木さんは「問題が多いからこそ、一生懸命、漁業から地域を復興させたい。成功すれば支えてくれる沖縄と福島を結ぶ大きな縁にもなる」と熱く語った。

英文へ→Head of Iwaki Fisheries Cooperative studies sea urchin breeding in Okinawa