水産庁長官、説明なしを謝罪 日台漁業協定で宮古・石垣訪問


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本川一善長官(右)の説明に反論する漁師=20日、石垣市の八重山漁協

 来県中の水産庁の本川一善長官は19日、宮古島市(下地敏彦市長)と石垣市(中山義隆石垣市長)を訪れ、日台漁業協定について両市長や漁協関係者らに説明した。漁協側から協定締結前の説明がなかったことに批判の声が上がり、本川長官は「(交渉が)急に動き始め、途中経過を伝えることができなかった。心からおわび申し上げる」と謝罪した。

一方、記者団に対し、協定見直しは困難との認識も重ねて示した。

◆宮古3漁協 「説明あれば要望言えた」
 【宮古島】伊良部、宮古島、池間の3漁協への説明会では組合員から批判する声が相次いだ。漢那一浩さん(64)は「事前に説明がないのが一番の問題だ。協定を結ぶ前に漁民に説明してくれれば、要望も言えた」と怒りをあらわにした。
 3漁協は、連名で法令適用除外区域の縮小と日本の漁業法令・基準の台湾漁船への適用、監視体制強化とともに、日中漁業協定の早期見直しも訴えた。
 本川長官は、宮古島近海での中国漁船によるサンゴの密漁について「これまでも(日中漁業)委員会を通じて申し入れてきたが、ことしの委員会で、わが国の法令が適用できないかも含め模索したい」と語った。
 また下地市長は安倍晋三首相、本川長官に宛てた要請文を手渡した。
 日台漁業協定に伴い漁獲量減などの影響が懸念されることから、安全で円滑な操業と資源管理のルールづくり、操業に影響が出た場合の補填(ほてん)検討などを含めた漁業振興制度の創設を訴えた。

◆八重山漁協 「線引きは政治的思惑」
 【石垣】石垣市の八重山漁協での説明会では、マグロ漁船の漁師らが「地元が反対しているのに政治的な思惑で線引きした。地元をばかにしている」「先島を切り捨てたのと一緒だ。今まで通りの方が良かった」などと厳しく批判。先島北の海域で台湾漁船の操業を認めることは、取り締まりが奏功している現状より後退するなどと指摘した。
 漁師らは、台湾漁船が地元漁船より大きく、数も多いことを強調。「台湾漁船は見るだけで恐ろしい。同じ所に網を入れれば切られてしまう。言葉も分からないのにどうやってルールを守るのか」と訴えた。
 八重山漁協の上原亀一組合長は台湾の暫定執法線を越える部分の海域について、ルールが確定するまで台湾側の操業を認めないよう要望した。一方、石垣市役所で中山市長は「現場が第一。漁業者が納得するまでやってほしい」と要望し、本川長官は「結果を出すしかない」と答えた。