「抑止力」揺らぐ根拠 「海兵隊移転可能」の米研究所報告

在沖兵員2千人で充足
 米軍事戦略に影響力を持つシンクタンクのランド研究所が4月末に公表した報告書で、定数1万9千人の在沖海兵隊について、小規模紛争や災害の初期対応に当たる第31海兵遠征部隊(31MEU、約2千人)を除く大部分を米本土に移転しても、「展開能力にはわずかな影響しか及ぼさない」と指摘した。同研究所は元国防長官らがかつて要職を務めるなど、国防総省とも関係が深く、今回の報告書も同省の委託で作成している。在沖海兵隊の大半が米本土に移転可能とした同研究所の評価は、在沖海兵隊の「抑止力」や沖縄の「地理的優位性」の薄弱さを軍事面から肯定した内容となっている。

 在日米軍再編計画では、在沖海兵隊のうち9千人をグアムやハワイ、オーストラリアなどに移転し、残り1万人は抑止力維持のため沖縄に残すとしている。
 だが今回の報告書は、約2千人の31MEUを構成する兵員を残せば、グアムやハワイに移転するとした分も米本土へ振り向けることができ、さらに再編後も沖縄に残るとされた第3海兵遠征軍司令部の米本土への移転も可能と指摘した。
 日米両政府が再編後も「抑止力」維持のために沖縄駐留が必要だとしてきた1万人の海兵隊駐留が、2千人規模で足りることになり、数字には大きな開きがある。そもそも両政府が繰り返してきた「1万人」は、具体的構成が明らかにされてこなかった。
 報告書は31MEUと連動する航空部隊は「引き続き沖縄と岩国基地(山口県)にとどまる」としたが、うちヘリ部隊が駐留する普天間飛行場の返還・移設問題へは具体的に言及していない。同じく31MEUと連動する強襲揚陸艦は、引き続き長崎県佐世保を母港とするとした。
 31MEUについては、これら部隊を支える機能は既に日本国内に分散している状況がある。さらに2012年の日米合意では、普天間のヘリ部隊と行動を共にする沖縄の地上戦闘部隊も大幅に海外に移転することも決めており、普天間の代替基地を県内に建設する合理性や「地理的優位性」の根拠はそもそも乏しい。
 一方で再編計画に基づく在沖海兵隊のグアム移転事業は、費用の見積もりや実効性が疑問視され、米議会が関連経費の支出を凍結している。日米政府は現行計画推進の姿勢を崩していないが、普天間の辺野古移設を含め、米国側から見ても再編計画実現の見通しは立っていない。
 国防総省とのつながりが深い同研究所は今回、(1)展開能力の維持(2)費用の削減(3)県民の反対を和らげる―との判断基準で在沖海兵隊の配置見直しに言及しており、財政難を背景に大幅な軍事予算削減に取り組む米政府の政策にどう影響するかが注目される。(島袋良太本紙ワシントン特派員)



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