戦争記録を集大成 「戦世の南風原―語る のこす つなぐ―」


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 【南風原】南風原町史第9巻戦争編本編「戦世の南風原―語る のこす つなぐ―」(A4判、441ページ)がこのほど発刊された。

全3章からなり、1983年から実施した町民の戦争体験の聞き取り調査を基に発刊した12カ字の戦災調査報告書(記録集)や、戦争関連書籍の集大成。体験者の証言104件を九つのテーマに整理分析し、新たな試みとして町内に所在する「戦争遺跡」「碑」などモノを歴史として記録し、南風原の沖縄戦を描いた。
 編集委員長の吉浜忍沖縄国際大学教授は「12年かけた調査には延べ約130人の若者が関わった。次世代への継承の視点から、執筆者(18人)の多くに20、30代を起用したのが他市町村の取り組みにはない特徴」と強調し「若い人にぜひ読んでもらいたい」と話した。
 全編カラーで、写真や図を多用し、若年層にも読みやすいように、ふりがなを付けた。
 第1章では、南風原を視点として沖縄戦への道、経過の概要を描いた。新しい試みとなる第2章「モノから見る南風原の沖縄戦」は町内にある「戦争遺跡」「碑」、南風原文化センター所蔵の「歴史資料」「写真」を44項目にわたって取り上げ、詳細に記録している。「証言にみる南風原の沖縄戦」と題した第3章では、これまで発刊された記録集などの証言と手記を九つのテーマに分類し収録した。
 執筆者の1人嘉数聡さん(25)は「今残さないと消えてしまうという思いで取り組んだ。南風原の戦争を深く知る機会になった」と話した。発刊の報告を受けた城間俊安町長は「継承を意識し信念を持っての取り組みに感謝したい。町内外に受け継いでいきたい」と話した。
 同巻は一括交付金を活用し600部を発行。町内の図書館や県内公立図書館にも配布する。
 問い合わせは南風原文化センター(電話)098(889)7399。

南風原町史第9巻戦争編本編「戦世の南風原―語る のこす つなぐ―」
城間俊安町長(右から4人目)に南風原町史第9巻戦争編本編を手渡す編集委員長の吉浜忍沖国大教授(同3人目)ら=16日、南風原町役場