自民「辺野古」公約 官邸意向で転換か


社会
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 自民党は5日、米軍普天間飛行場移設問題をめぐり参院選公約に一転して「辺野古移設」を明記する方針を固めた。地域版公約に「県外移設」を掲げる方針の県連とのねじれを解消できない党執行部に対し、党内で批判が強まる中、高い内閣支持率で勢いを維持する首相官邸側が名護市辺野古移設の明記を求める安倍晋三首相の意向を伝え、石破茂幹事長ら執行部が方針の転換を余儀なくされたとみられる。

 移設公約をめぐっては党本部と県連が協議を重ねたが、5月中旬に県連は党本部の了解が得られなくても地域版公約に「県外」を掲げる考えを強調。県連に配慮した党本部の執行部は、公約に「辺野古」は明記しない方針を示し、問題は落ち着くかに見えた。
 だが5月下旬に首相と会談した党の高村正彦副総裁は記者団に「党本部と地方がばらばらでは民主党と同じだ」と注文。党内に「辺野古」明記を求める声が強いことが浮き彫りとなり、首相の意向をくんだ発言ともみられていた。
 石破氏や高市早苗政調会長ら執行部は当初、昨年の衆院選を踏襲して公約に移設先を明記しない代わり、県連も「県外」を取り下げるよう要求。だが「県外を取り下げれば(県連が)死ぬ」(翁長政俊会長)との強い覚悟を前に妥協点を見いだせなかった。見通しが甘かったといえ、求心力低下を予測する声もある。
 5月末、辺野古埋め立ての同意書を3月に防衛省に提出した名護漁協組合が、自民党の辺野古不明記の方針を受けて同意撤回を検討しているとの情報を、2月から水面下で沖縄訪問を繰り返してきた河井克行衆院外務委員長(自民)が菅義偉官房長官に報告。菅氏は「辺野古をきちんと明記すべきだ」と執行部に求める考えを示していたという。
 4日夜、都内の飲食店で県連の照屋守之幹事長と向き合った石破氏は「何とかならないか」と「県外」を取り下げるように迫ったが、照屋氏は首を縦に振らなかった。
 照屋氏は会談を振り返り「官邸や党内からいろいろあって石破氏も苦しいはずだが、仮に県連が県外移設を取り下げても地元の厳しい状況は何も変わらない」と語った。
 党幹部は5日、方針転換について問われ「きちんと書いた方がいいに決まってるだろう」と強がって見せた。一方で官邸や党本部から「県外移設」を譲らなかった県連に対し、参院選を境に圧力が強まることも予想される。
(松堂秀樹)