戦争資料の寄贈“減” 新収蔵品展、今後困難に


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2年ぶりに開催された「新収蔵品展」を見学する来場者=13日、糸満市摩文仁の県平和祈念資料館

 【糸満】糸満市摩文仁の県平和祈念資料館(上与那原美和子館長)は、一般の個人や団体から戦争資料の寄贈を受け、毎年6月、新資料を披露する「新収蔵品展」を開催しているが、ここ数年は資料が集まらず、今後の開催が危ぶまれている。学芸担当の職員は「沖縄戦の記憶継承を進める上でも危機的状況だ」と懸念を募らせる。

一方、識者からは「今後は、過去の資料に新たな視点を加えて展示する必要がある」と指摘する声もある。
 昨年の新収蔵品展は、資料が集まらなかったため、中止となった。ことしは3月までに、団体から多数の資料が寄贈され、13日から2年ぶりに開催している。
 同資料館は、県内最大規模の戦争資料約4万点を保管している。2004~08年度は200~300点の資料提供があった。09年度は県遺族連合会から寄贈を受け、約3千点の戦争資料が集まった。だが、10~12年度はそれぞれ約100点に減少した。今回の新収蔵品展は、3月に解散したNPO法人沖縄戦記録フィルム1フィート運動の会から107点の資料提供を受け、ようやく開催にこぎ着けた。しかし、4月に入ってからの寄贈は2点しかなく、来年の開催は難しい状況だ。
 学芸担当の比嘉正樹主査は「沖縄戦の実相を伝える貴重な資料が少なくなり、今後の研究や(戦争の)記憶継承を進める上でも危機的状況だ。資料をぜひ寄贈してほしい」と呼び掛けた。
 沖縄戦を研究する沖縄国際大学の吉浜忍教授は「戦後68年の時を経て、新たに見つかる資料が少なくなるのは当然のこと。資料収集を進めるとともに今後は過去の資料を新たな視点で展示する工夫が必要になってくる」と提言した。新収蔵品展では「くぎ入り缶詰爆弾」など、貴重な資料207点が7月末まで入場無料で見学できる。(梅田正覚)

英文へ→War artifacts exhibit of Peace Memorial Museum faces difficulty