西普天間返還前倒し 「辺野古」思惑にじむ


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 日米両政府は、当初の計画より半年前倒して西普天間住宅地区返還を承認した。作業前倒しの背景には、早い成果をアピールし、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に理解を得る狙いがある。安倍政権は嘉手納より南の米軍基地の返還計画を前倒しする方針だが、対象は「速やかに返還」とする、時期に幅を持たせた地区に限られ、全体の1割未満にすぎない。

 西普天間住宅地区は、4月の日米合意では「2014年度またはその後」とした地区。当初計画では半年間の測量調査と事務手続きを行い、年末の日米合同委員会で承認予定だった。だが、同地区を返還の「モデル地区」(防衛省幹部)と位置付ける政府は、4月時点の計画を変更し、事務手続きの期間を短縮した。
 早い実績のアピールは、普天間飛行場の辺野古移設に必要な埋め立て申請に対する仲井真弘多知事の判断を、名護市長選前に迫りたい政府の思惑がにじむ。
 8月末に返還される方向の牧港補給地区北側進入路を含め、返還のめどが立っているのはすぐに返還できる施設だけだ。跡地開発で期待が高い牧港補給地区は、県内への機能移転や米領グアムなどへの移転が条件。環境影響評価(アセスメント)の追加実施や米議会による関連予算凍結などで移転事業が進まず、返還の見通しは立っていない。
 安倍政権は負担軽減への取り組みをアピールするが、県が「安全性への懸念が払拭(ふっしょく)されていない」(仲井真知事)と配備中止を求めている垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機を7月に追加配備するなど県内の反発は高まっている。
 普天間移設でも自民党県連が参院選の公約に党方針と異なる県外移設を掲げるなど、県と政府の溝は埋まっていない。西普天間住宅地区の返還作業の前倒しは安倍政権が普天間移設を含めた基地問題で、具体的な成果を示せない手詰まり感の裏返しともいえる。
 (問山栄恵)