グアム移転費凍結継続 遠のく負担軽減 計画停滞 県にいらだち


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 米上院軍事委員会が在沖米海兵隊のグアム移転費の凍結継続を決めた。移転の工期は5年程度とされるが、米側の予算計上は2010~13会計年度の合計で総事業費55億ドル(約5300億円)の1割未満。日本側の資金拠出も09~13年度に計上した916億円のうち8割が未執行で、視界不良が続く。県は「日米が合意した基地負担軽減がほごにされることはあってはならない」(又吉進知事公室長)と計画停滞にいらだちを募らせる。

 グアム移転の完了時期についてはロックリア米太平洋軍司令官が3月に当初予定の14年度から20年にずれ込むと表明。だが4月に米上院が公表した報告書は「議会が予算凍結を解除しても24年にしか終わらない」と指摘している。
 さらに上院が予算凍結の解除を検討する条件に挙げる、移転の費用や工程を示した基本計画について、国防総省は少なくとも今後5年は策定困難と想定しており、単純計算では移転完了は当初予定から15年も遅れて29年度以降に延びる可能性もある。沖縄の「負担軽減」の柱とされた移転事業は、手詰まり状態にある。
 米上院がグアム移転費の支出に厳しい態度で臨むのは米国の財政難の影響が大きい。ただ米政府と議会は中国や北朝鮮のミサイル技術の向上を背景に、リスク分散の観点から在沖海兵隊の一定数を大陸から離れた太平洋後方へ遠ざける方針も共有。12年の日米合意見直しでは在沖海兵隊の移転先をグアムだけでなくハワイやオーストラリアにも分散する計画に変更した。
 上院軍事委は14会計年度の移転費凍結の方針を示した4月、米軍海外駐留に関する調査報告書を公表。在日米軍に対する日本の財政支援が最近20年間で減少したと主張し、是正法案の検討も表明するなど日本側への圧力を強め始めた。グアム移転など米軍再編事業の停滞の打開へ、今後日本政府にさらなる費用負担増を迫る可能性もある。
(島袋良太、池田哲平)