外相、防衛相戦没者追悼式参列 政治利用にくぎ


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県、基地関連付け警戒

 23日の沖縄全戦没者追悼式に初めて外相、防衛相も参列する。両閣僚出席について政府は「沖縄と寄り添う」姿勢の表れだとしているが、米軍普天間飛行場の辺野古移設に向けて県民の理解を得るための地ならしとの思惑も見え隠れする。政府要人が慰霊の日を政治的な機会と捉える姿勢について、県幹部からは困惑の声も上がっている。

■対応に困惑

 毎年8月に広島、長崎両市で開かれる原爆犠牲者の追悼式典に外相、防衛相がそろって出席したことはない。広島市によると過去に防衛相の参列はなく、外相も直近10年間では2010年の岡田克也氏(当時)の例があるだけだ。長崎市の式典にはこれまで外相、防衛相ともに参列した実績はないという。
 他の慰霊・追悼式典と比べても際立つ沖縄への「配慮」について県幹部は「沖縄に好印象を与えたいのだろうが、基地問題と慰霊の日の式典は一切関係ない。切り離して考えるべき問題だ」と冷静な対応を示す一方、「県民がしっかりとしていればいい」と式典の政治利用にはくぎを刺す。
 県は今回、外相と防衛相を特別招待という形にしたが、岸田文雄外相、小野寺五典防衛相サイドから知事との会談打診はなかった。別の県幹部は両氏が出席の意向を示した当初から、慰霊の日が基地問題と関連付けられることに警戒感を示していた。
 同幹部は「両大臣が公式、非公式に関わらず知事との会談を要望した場合、会わなければならない状態になる。慰霊の日が政治問題化する恐れもある」と述べるなど、両氏の出席に困惑する場面も見られた。

■「訪問はいい機会」

 「苦難を耐え抜かれた先人の心情に思いをいたし、沖縄の方々に寄り添いながら基地負担の軽減に取り組んでいくのが安倍政権の基本姿勢だ」。菅義偉官房長官は12日の記者会見で外相らの出席について述べた。
 政府関係者は「とにかく閣僚が沖縄に足しげく通うことはいいことだ。主権回復の日式典では反発があったが、追悼式への参加は政権の沖縄への思いを示すいい機会となる」と語る。
 海外要人との会談や自衛隊の部隊視察を精力的にこなす小野寺防衛相だが、沖縄訪問はこれまで2回。防衛省幹部は「もっと沖縄に足を運んでほしいが、タイミングも難しい。今回の訪問はいい機会だ」と話す。
 安倍政権は普天間の辺野古移設方針を明確にしているが、仲井真弘多知事が県外移設を主張し、県議会や自治体も県内移設に反対。自民党県連も参院選公約に党本部方針と異なる県外移設を掲げるなど、政権との溝は埋まらない。安倍首相はじめ閣僚らがこぞって式典に参加するのは、沖縄との信頼関係への危機感や、基地負担軽減策で具体的な成果を示せない手詰まり感の裏返しにも見える。
(池田哲平、問山栄恵)