大挙参列「圧力」懸念も/地元登壇者「県外」で一致
戦後68年の慰霊の日式典で仲井真弘多知事をはじめ地元側の登壇者は、沖縄戦の惨禍と今も続く過重な基地負担を結び付け、「我慢の限界」(喜納昌春県議会議長)と米軍普天間飛行場の県外移設を政府側に強く要望した。
一方の安倍晋三首相はあいさつで普天間問題への言及を避けたが、式典後の共同インタビューで「普天間基地移設に県民の理解を得たい」と述べ、名護市辺野古移設を推進する考えを重ねて表明。参院選日程も近づく中、県民感情にも配慮して慎重に言葉を選んだとみられるが、移設問題での隔たりの大きさは隠せなかった。
県遺族連合会の照屋苗子会長はオスプレイの配備について「遺族として断じて容認できない」と強調し、普天間飛行場の県外移設も要求。知事を含めた沖縄側の3人はすべて県外移設に言及し、一致した要求であることを内外に示した。
「振興」に力点
一方、安倍首相はアジアに近い沖縄の優位性を挙げながら「沖縄振興は国の政策の重要な柱だ」と表明。基地問題では負担軽減を進めていく姿勢を強調したが、具体策には触れず。振興に関する発言が目立った。
しかし式典後の記者団とのインタビューでは普天間問題をめぐる自民党県連と党本部との摩擦について「一日も早い移設に向けて努力を重ねていきたい。県連の了解、県民に理解してもらえるよう努力していきたい」と米政府と合意した辺野古移設を進めるとの強固な立場を示した。
冷ややかな見方も
ただ首相は基地問題に関して全体的には慎重な言い回しに終始した。自民党県連幹部は「沖縄に対する気遣いや配慮があったのではないか」と評価する。
県幹部は首相あいさつに関して「沖縄振興も基地問題も踏み込んだ発言ではなかったが、言うべきことは言っているのではないか」と冷静に受け止める一方、「参院選前に沖縄との関係で波風は立てたくないのではないか」と推測した。
今回の追悼式に当たり政府は首相のほか外相と防衛相も初めて式典に出席させるなど、異例の対応で沖縄側に「配慮」を示した格好。米政府からも駐日大使としては18年ぶりにルース氏が出席した。
だが閣僚らが大挙して式典に参列するさまは、地元側には「普天間飛行場の辺野古移設に向けた圧力」と捉える向きもある。移設問題をめぐる県民世論との隔たりがあらためて浮き彫りになる中で、辺野古移設に向けた埋め立て手続きは今月末にも告示・縦覧の新たな段階に移る。首相が「沖縄の負担を少しでも軽くするよう、全力を尽くす」との約束を自らほごにしないためにも、県民の声に再度耳を傾ける姿勢が問われている。(池田哲平)