【東京】尖閣諸島の領有権をめぐり、日本政府は米政府に対し、日本への支持を明確に打ち出すよう強く求めていない。7日の米中首脳会談では中国の習近平国家主席が尖閣諸島は「核心的利益」として領有権を主張したのに対し、オバマ大統領は領有権について特定の立場を取らないとの方針を表明したとされる。尖閣問題で安倍晋三首相は「冷静かつ毅然(きぜん)とした対応」で臨むと繰り返しているが、米政府には及び腰で、「毅然とした対応」ができていないように見える。
尖閣諸島は1972年、沖縄返還協定の発効によって米政府が日本に施政権を返還。米政府は返還後も米軍射爆撃場として尖閣の大正島と久場島を日本から提供を受け続けているが、領有権には当時から中立の立場を示している。
こうした米側の対応に当時の日本政府は反発。72年3月の参院沖縄北方問題特別委員会で福田赳夫外相(当時)は「返還協定で(尖閣が)入っている。この問題に疑いは差し挟む余地はないと米国自身が確信しているはずだ」と指摘。「米政府の中立的な言い回し、態度が非常に不満だ。厳重に抗議をする」と述べ、実際に駐米大使を通じて米側に抗議した。
だが今の日本政府は「日本固有の領土で、領土問題は存在しない」と強調する一方、米政府に及び腰だ。菅氏は7日の会見で「米国はサンフランシスコ講和条約で(尖閣を)日本の領土と認定した」と強調したが、米政府に立場を明らかにするよう要求するかという問いには答えなかった。
日本側は「日本の領土ということは理解しているだろう」(菅義偉官房長官)と期待するが、米政府は距離を置く。本紙の取材に答えた国務省のシール報道官は、「米国も理解している」との菅氏の認識について「米国の立場は一貫している。尖閣の領有権に関する論争には特定の立場を取っていない」と一蹴したが、講和条約との関係には言及を避けた。(松堂秀樹)