『欲望のバージニア』 登場人物の強烈なコントラストがドラマに振幅


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 禁酒法時代に密造酒ビジネスで名を馳せた3兄弟の話で、実話に基づく。主人公は、トム・ハーディが演じる男気にあふれた次男と、シャイア・ラブーフ扮する未熟な野心家の三男。「絶対に死なない」という伝説を持つ彼らの絆と、悪徳取締官との対決が軸になっている。

 まず、トゥルー・ストーリーを逆手に取った“不死身”という設定がうまい。本作が根幹部分でギャング映画らしい乾いたタッチを維持できているのも、この設定がもたらすユーモアのお陰である。だが、三男の成長物語に多くの時間が費やされているため、同時にウエット感もあり、ギャング映画としては賛否が別れるところだろう。逆に言えば、青春映画好きのツボにはハマるかもしれない。だから、ギャング映画なのに昼間のシーンが多く、“真昼のギャング映画”と呼びたくなる。
 そして、本作の一番の見どころは、俳優陣の個性を生かした各キャラクターの面白さにある。ストイックな次男と無鉄砲な三男の対比。ミステリアスで妖艶なジェシカ・チャステインと純真無垢なミア・ワシコウスカという、対照的な2人のヒロイン。登場人物たちの強烈なコントラストがドラマに振幅を生み、最後まで片時も飽きさせない。★★★★☆(外山真也)

 【データ】
監督:ジョン・ヒルコート
脚本・音楽:ニック・ケイヴ
出演:シャイア・ラブーフ、トム・ハーディ
6月29日(土)から全国順次公開
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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。
(共同通信)

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外山 真也