防衛省と与那国町が町有地賃貸の仮契約を結び、難航していた自衛隊用地交渉に区切りを付けた。自衛隊配備に伴う「協力費」10億円の要求を譲らない姿勢を示していた外間守吉町長が態度を一変させ、締結に至ったのは防衛省側の振興策上積みや、8月11日投開票の町長選をめぐる候補者選定が影響したとみられる。
防衛省の担当者らは14日に町を訪れ、振興策案を提示した。町議会が要望するごみ処理場と伝統工芸館の建て替えほか、配水施設、漁業用の超低温冷蔵庫・加工施設など多くの施設整備を提案したという。
防衛予算による施設整備は通常、3分の1を自治体が負担する仕組みだが、外間町長は負担を10分の1~2に軽減するよう要求。防衛省側が前向きな態度を示したことで「10億以上のものが出てくる」と期待感が膨らみ、町有地賃貸に向けた手続きが加速した。
一方、町長選直前に長年の懸案だった自衛隊用地の確保にめどを付けたことに対し「町長選出馬に向けた地ならし」と指摘する声が自衛隊誘致推進派と反対派の双方から上がっている。
推進派の与那国防衛協会は10億円要求問題で混乱させた町長の責任を追及し、独自候補擁立を検討しているが、外間氏が町有地賃貸に区切りを付け出馬表明したことから、推進派内の争点が消滅。「共倒れ」の心配が出ている。
推進派関係者は「町長は自分で問題を起こし、配備計画を混乱させた。素直に応援できるわけがないが、割れていては選挙に勝てない」と不満を漏らした。(稲福政俊)