埋め立て申請 告示・縦覧 政府 移設へ「加速」 負担軽減アピール


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 県は、米軍普天間飛行場代替施設の名護市辺野古への建設に向けて沖縄防衛局が提出した公有水面埋め立て承認願書の告示・縦覧を開始した。政府は「手続きが進んでいる」(小野寺五典防衛相)と評価。埋め立て承認に向け、仲井真弘多知事の理解を求めていく構え。一方、県は慎重姿勢を崩していない。政府が県内移設に前のめりになる中、県は米国防総省幹部に対し、本土の民間専用空港と軍専用空港のうち、移設の可能性がある候補地を提起するなど県外移設に向けた具体的な動きも見せている。

 「検討してほしい」
 フィリピン・スービックの米海軍基地跡地の視察を終え帰国した小野寺防衛相は、山本一太沖縄担当相に対し、比政府の施策をまとめた資料を手渡した。「閣議後の立ち話で済む話」(政府関係者)とする内容に、わざわざ会談を設定し、沖縄の基地負担軽減の柱と掲げる嘉手納基地より南の米軍施設・区域の返還地に関する政府の取り組みをアピールする。

■環境づくり
 「できるだけ早くとは思っている」
 菅義偉官房長官は28日の会見で仲井真知事の承認可否の判断時期についてこう言及した。与党関係者は「名護市長選で移設に反対する市長が当選すれば、知事が承認することが難しくなる。そうなれば辺野古移設が頓挫する可能性も出てくる。判断は市長選前が望ましい」と言い切る。
 “最悪な事態”を避けるため、政府は来年1月に実施される名護市長選前に、仲井真知事が埋め立て承認ができるよう環境づくりに全力を挙げる。嘉手納より南の米軍施設の返還に関する計画の前倒しや沖縄振興策で理解を求める構えだ。
 一方、防衛省幹部は「県は粛々と進めてほしい。同意が必要なのは法律上、利害関係が発生する名護漁協だけで、名護市には伺いを立てるが、同意を得る必要はない」と強調する。

■慎重に判断
 埋め立て申請の可否に関する知事判断について、當銘健一郎土木建築部長は、県議会6月定例会の代表質問で「内容審査手続きの標準処理期間は4~6カ月だが、多数の利害関係者意見が提出される見込みなどから審査期間と意思決定時期はまだ明確ではない」と答弁。住民生活への影響などを踏まえ、あくまで慎重に判断する姿勢を強調した。
 県は、県外の既存飛行場への移設を引き続き追求。県幹部は政府の姿勢について「辺野古だけにしかスコープを当てていない。住民をどう救うのかを検証していない」と嘆息を漏らす。ほかの県幹部は「疑問点が解消されていない環境アセスは、知事判断に直結する」と語り、アセスの不備により行政判断上、不承認となる可能性も示唆する。
 県は7月以降、キャンプ・シュワブ内の埋め立て予定地の現地調査や稲嶺進名護市長らの意見も聴取し、本格的な内容審査へ入る。知事の承認可否判断に向け、県と政府の双方の動きが加速するが、あつれきは避けられそうにない。
(問山栄恵、池田哲平)