ベスト4決まる 県高校野球第9日


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 第95回全国高校野球選手権沖縄大会第9日は15日、沖縄セルラースタジアム那覇と北谷公園野球場で準々決勝を行い、ベスト4が決まった。

美里工業は八回に勝ち越し、7―5で美里を破り19年ぶりの準決勝進出を決めた。八重山は昨年覇者の浦添商に5―3で快勝し、3年ぶりにベスト4へ進出。第3シードの真和志は南風原を3―1で退け、44年ぶりに準決勝へ駒を進めた。第2シードの沖尚は糸満を7―0の七回コールドゲームで圧倒し、3年連続の4強入りを決めた。大会第10日は20日、同スタジアムで準決勝を行う。

◆美里工/終盤に一気
 最初の1球を見て、美里工の宮城諒大は確信した。「これなら行ける」。5―5の同点で迎えた八回2死二塁で代打に指名され、一打逆転の好機で打席に。マウンドには美里の好投手・諸見里俊汰。六回まで美里工打線を苦しめた相手だった。
 初球はチェンジアップを見逃した。「ボールがよく見えている」。宮城は自信を持ち、諸見里と向かい合った。2球目もチェンジアップ。真ん中に甘く入った。力強く振り抜くと、打球は右中間を深く破った。「すごくいい投手だけど、球威が落ちていた」。投球の微妙な変化を見逃さなかった宮城が、値千金の一本で逆転の走者を本塁にかえした。直後に自身も7点目のホームを踏んだ。
 序盤は美里のペースだったが、何度も接戦を制してきたチームは落ち着いていた。「焦るな。野球は九回まである」。神谷嘉宗監督は選手を鼓舞し続けた。4点リードされて迎えた七回には代打の比嘉恵次郎が変化球を右前に運び、同点に追い付くビッグイニングを演出した。「練習通りのバッティングができた」と比嘉。神谷監督は「采配に答えてくれた選手たちが心強い」と目を細めた。(平安太一)

◆八重山/好機逃さず
 昨年の甲子園出場校・浦添商を相手に、リードされることなく2点差で快勝した八重山。3年ぶりのベスト4進出を決めた。
 1点をリードし、追加点が欲しい四回裏。4番・大浜雅史がこの日2本目の安打で出塁。東長田裕太が送ったが、後続の比嘉優太は三振に打ち取られ、2死二塁とされた。打席に立ったのは、エース・池村英隆。高めに浮いた甘い球を見極め思い切り振り抜くと、打球は左翼手の頭を越える二塁打となり、大浜が生還。波に乗った八重山は、この回さらに1点を加えた。
 右腕エースはピッチングも光った。この日は速球を中心に、スライダーを交えた配球で9奪三振と好投。仲里真澄監督は「いつもリードしている場面で崩れる」と話すものの、最終回は内野ゴロ、連続三振に仕留め、勝負を決めた。
 前戦から腹痛が続き、本調子ではなかったという池村。この日も薬を飲んで痛みを抑えながらの登板だったが「気持ちで投げられた」と、納得の笑みを浮かべた。「仲間が点を取ってくれるから、とにかく最少失点に抑えたい」と、決勝進出に意欲を見せた。(仲本文子)

◆真和志/エース快投
 44年ぶりに準決勝進出をもぎ取った真和志。持ち前のこつこつとつなぐ打線はもちろん、譜久村誠悟の投球もさえ、相手監督に「力負けした」と言わしめた。
 初回に先制を許したものの、エースのピッチングは尻上がりに精度を増した。得意のカーブと速球を中心に、緩急をつけた投球で九回中六イニングを三者凡退に仕留める力投を披露。最終回こそ先頭打者に単打を許したが、後続を全て打ち取った。
 一方、攻撃ではあと一歩のところで差を広げられないもどかしい場面が続いた。二回、四球で出塁した砂邊大州に続き、譜久村が相手失策、古謝佑弥が野選で無死満塁としたが、併殺の間に、1点は返したものの後が続かなかった。
 四回も1死満塁のチャンスを生かせず無得点。五回に2点を追加したが、なおも2死満塁の好機から走者を本塁にかえせず、高良雅秀監督は「今大会を通して最悪の試合」と苦笑いした。
 それでも譜久村は「徐々に調子は上がっている」と頼もしい。「次は先制されずに、流れを引き寄せる投球がしたい」と、次戦に向けて気を引き締めた。(仲本文子)

◆沖尚/投打で圧倒
 矢のような返球が沖尚の捕手・具志堅秀樹の手元に来た。六回、エースの比嘉健一朗が四球と安打で2死一、二塁のピンチを招いた。「得点されてもいい。思い切り攻めよう」。女房役の具志堅は比嘉に声を掛けた。次の打者に左前にはじき返されたが、左翼・名嘉昇司の好返球で、本塁を狙った二走を刺した。
 比嘉も初回から好調だった。立ち上がりの数球で糸満打線が直球に狙いを絞っていると確信した。「変化球に手を出すそぶりは見せなかった」。初回を終えて具志堅と話し合い、変化球中心の配球で攻めることを決めた。直球も緩急をつけてタイミングを外し、糸満打線に凡打の山を築かせた。
 3回戦に沈黙していた打線は一転して安打を量産した。初回に先制点を呼ぶ適時三塁打を放った赤嶺謙は、北中城戦でサヨナラ逆転勝ちしたことに触れ「勢いをそのままに入れた」と笑顔を見せる。諸見里匠主将は「(北中城戦の)勝利があったから先制点を取れた」と強調する。「今日の勝利も次につながる」と勢いを準決勝にぶつけるつもりだ。(平安太一)

<きのうの結果>
▽準々決勝
美里工 7―5 美里
八重山 5―3 浦添商
真和志 3―1 南風原
沖尚 7―0 糸満
 (七回コールド)

<20日の試合>
【セルスタ】10時
美里工―八重山
真和志―沖尚

美里―美里工 8回2死三塁、7点目の生還をし気勢を上げる美里工の宮城諒大=15日、北谷公園野球場(諸見里真利撮影)
八重山―浦添商 4回八重山2死二塁、適時二塁打を放つ池村英隆=15日、沖縄セルラースタジアム那覇(金良孝矢撮影)
真和志―南風原 相手打者を三振に仕留め、雄たけびを上げる真和志のエース・譜久村誠悟=15日、沖縄セルラースタジアム那覇(金良孝矢撮影)
糸満―沖縄尚学 6回表、沖尚の左翼・名嘉昇司の好返球を受けた具志堅秀樹が本塁で走者を刺す=15日、北谷公園野球場