第95回全国高校野球選手権沖縄大会はノーシードから接戦を制して勝ち上がってきた美里工と、第2シードながら数々の激戦を乗り越えてきた沖縄尚学が決勝で激突する。
20日に沖縄セルラースタジアム那覇で行われた準決勝第1試合は、八重山が美里工の立ち上がりを攻め、序盤に3点のリードを奪った。しかし八回、八重山の先発・池村英隆が美里工打線につかまり、7安打を浴びて逆転を許した。第2試合は沖尚と真和志の両投手が好投する白熱した展開となった。両チーム一歩も譲らず迎えた延長十回裏。沖尚は相手の失策から出た走者を得点につなげ、サヨナラ勝ちした。決勝進出は美里工が19年ぶり2度目、沖尚が2年連続11度目。美里工は初めて、沖尚は8年ぶり6度目の夏の甲子園出場を目指す。決勝は21日午後1時から同スタジアムで行われる。
◆美里工、八回猛攻7点 2死から驚異の逆転
風はほとんど吹いていなかった。八回表2死二、三塁。美里工の高江洲大夢がはじき返した直球は、空高く舞い上がった。高江洲が「捕られる」と思いながらも全力疾走すると、打球は大きく伸びて中堅手の頭上を越えた。走者2人が生還。三塁を蹴った高江洲は頭から本塁に突っ込み、ランニング本塁打となった。この回だけで7点。勝利を大きく引き寄せた。
3点リードされて迎えた八回表。美里工の神谷嘉宗監督は選手らに言った。「この回が勝負だ」。八重山の池村英隆に7回まで内野安打1本に抑えられていたが、「投手に疲れが見え始める八回はビッグイニングが多い」と考えていた。無死から安打で走者を出したが、併殺で二死走者なしとなった。「運も尽きたか」。神谷監督は敗戦も覚悟したが、代打の比嘉恵次郎が流れを変えた。
内角の直球を引きつけて右前に運ぶと、続く神田大輝は「球がしっかり見えていた」と左前打で続いた。西藏當祥の二塁打で1点差に迫り、4番・宮城諒大の左前打で同点、5番・松堂正の適時打で試合をひっくり返した。
「まさか、あそこまで連打になるとは」。指揮官は八回の猛攻に驚いた様子。「みんなが力を発揮してよく打ってくれた。見事だった」。選手らの大活躍を思い出しながら、満足そうにほほ笑んだ。(平安太一)
◆沖尚、劇的サヨナラ 好走諸見里技あり生還
沖尚の諸見里匠は捕手のミットの数センチ先をすり抜けた。回り込みながらホームベースに触れると、球審は両手を広げてセーフを告げた。延長十回裏。サヨナラ勝利を決める生還だった。
白熱した投手戦に終止符を打ったのは、主砲の一打と諸見里の好走塁だった。
初回に真和志に先制点を奪われたが、六回裏に平良勇貴の右前打と安里健の犠飛で逆転に成功。九回に同点に追い付かれたが、諸見里は「(激戦だった)北中城戦に勝ったので気持ちに余裕があった」。
十回裏に先頭の諸見里が相手失策で出塁すると、犠打と四球で1死一、二塁に。打席には沖尚の4番・柴引佑真が立った。この日は無安打と苦しんでいたが、「今まで打てなかった分を返そうと思った」。高めの直球に合わせると、詰まった当たりが中前に落ちた。
二塁上の諸見里は一瞬、進塁をためらったが、打球が落ちるのを見届けて三塁に疾走。三塁コーチャーが大きく手を回しているのを確認し、「いちかばちか」と本塁を狙った。生還を阻止しようと手を伸ばした捕手をわずかな差でかわし、決勝点をつかんだ。
柴引は「(諸見里)匠は足が速いから外野に抜ければ決まると思った」。諸見里は「コーチャーを信じて走った」と笑顔を見せる。春夏連続の甲子園出場まであと1勝。諸見里は「絶対に優勝する」と闘志を燃やす。(平安太一)
◆きのうの結果
▽準決勝
美里工 7―3 八重山
沖尚 3―2(延長十回) 真和志
◆きょうの試合
▽決勝
【セルスタ】13時
美里工―沖尚