沖縄セルラースタジアム那覇で21日に行われた第95回全国高校野球選手権沖縄大会決勝は、第2シードの沖縄尚学が5―2で美里工を破り、8年ぶり6度目の夏の甲子園出場を決めた。
沖尚は初回、先頭の諸見里匠が三塁打で出塁、続く知念佑哉の左前打で先制点を奪った。知念は暴投と中飛で三塁に進み、4番・柴引佑真の犠飛で生還。美里工は三回表に島袋優の右前打で1点差に詰め寄ったが、沖尚も直後に1点追加。六回表に美里工が3連打で再び1点差としたが、沖尚は宇良淳がスクイズを決めリードを広げた。沖尚は左腕の比嘉健一朗と右腕の宇良が継投し、美里工を振り切った。
◆宇良、信頼応える熱投
マウンドの宇良淳は、大きく手を広げて深呼吸をした。九回表2死走者なし。気持ちを落ち着かせるために、一度間を置いた。最後の打者を二塁ゴロに打ち取ると、両手を高々と掲げて喜びを表現した。「どんな場面でも落ち着いて投げることができた」。3回1/3を被安打1の無失点で切り抜けた右腕は、自信に満ちた表情を見せた。
先発の比嘉健一朗が美里工打線につかまり、1点差に迫られた六回2死からマウンドに立った。「任せたぞ」。比嘉から声を掛けられ、「絶対に抑えよう」と気合を入れた。走者を一、二塁に背負うピンチでも、「相手を恐れずに腕を振ることができた」。低めに決まるスライダーで空振り三振に仕留めた。
七回は3人で切り抜ける完璧な投球。八回無死から内野安打で走者を許したが、「慌てずに投げられた」。バックの守りにも助けられて、二塁を踏ませなかった。九回は「キャッチャーを信じて投げた」と直球主体で攻めて、3人で終わらせた。
沖縄大会の頂点に立ち、春に引き続き甲子園への切符を手にした。「選抜の悔しさを晴らすために、ここまでやってきた」。再び大舞台に臨む右腕の瞳に力がこもった。(平安太一)
◆俊足知念 貴重な1点/4の4、打撃でも大活躍
チーム一の俊足、知念佑哉が走った。相手野手の中継が乱れるのを見逃さず、一気に本塁を陥れた。
三回裏。右前打で出塁して、犠打で二塁まで進んだ。4番・柴引佑真の中飛で三塁を目指したとき、送球が遊撃手の手前でバウンドするのが見えた。
「これはエラーもあり得る」。勢いを維持したまま三塁コーチャーの古波津輝将を見ると、大きく手を回して進塁を促していた。三塁を蹴り、捕手がボールをつかむのよりもわずかに早く、本塁に滑り込んだ。三回表に美里工に1点を奪われた直後。リードを広げる貴重な1点がチームにもたらされた。
「ショートがボールをはじくのが見えたので、知念の足を信じて手を回した」と古波津。「チームが勝てたので良かった」と引き締まった表情で話した。
知念は「得点して流れをつくりたかった」と達成感をにじませる。
知念は打撃でも4打数4安打の大活躍だった。「美里工のエースは低めに集まっていて打ちにくかった」と手を焼いたが、「低めに手を出さずに浮いたボールを捉えた」。準決勝の真和志戦では無安打で終わったため、「しっかり引きつけて打とう」と気持ちもこもっていた。
足と打撃で勝利に貢献した知念は「甲子園でも一つずつ勝ちたい」と力を込めた。(平安太一)
<頂点への道のり>
【沖縄尚学】
回戦 スコア 相手
1 9―0 美来工科
2 8―4 中部商
3 2―1 北中城
準々 7―0 糸満
準決 3―2 真和志
決勝 5―2 美里工