『ペーパーボーイ 真夏の引力』 キャスティングに?と思ったが…


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 ニコール・キッドマンは本当にこういう役がやりたいんだなぁ。イメージを覆したい気持ちは分かるけど…。マシュー・マコノヒーもこの役をやるにはマッチョ過ぎないか? そう思いながら見ていた。アカデミー賞で作品賞&監督賞を含む6部門にノミネートされ、助演女優賞と脚色賞に輝いた『プレシャス』のリー・ダニエルズ監督による新作だ。

 ニコールが演じるのは、会ったこともない死刑囚に引かれて冤罪を晴らそうとするシャーロット。マコノヒーは彼女の依頼で事件の真相を追う新聞記者ウォード役だ。物語はウォードの弟ジャックの視点で描かれ、本当に冤罪なのか?というサスペンスよりも、ジャックの“思春期もの”としての要素が際立っている。
 その意味では、シャーロットは確かにジャックにとってのファムファタールだ。とはいえ、娼婦まがいの奇行が目立つ彼女を演じるには、ニコールはノーブル過ぎる。だが、ジャックの主観を反映させてカリカチュアしたキャスティングだとしたら…。
 死刑囚や彼の仲間が住む場所は人里離れた沼の奥の異世界で、ジャックたちは泥だらけにならないとそこにたどり着けない。まるでウサギ穴に落ちたアリスのようである。つまり本作を、不思議の国に迷い込んだジャックのひと夏のファンタジーだと考えると、全てのつじつまが合うのだ。★★★★☆(外山真也)

 【データ】
監督:リー・ダニエルズ
出演:ザック・エフロン、ニコール・キッドマン、マシュー・マコノヒー、ジョン・キューザック
7月27日(土)から全国順次公開
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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。
(共同通信)

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外山 真也