基地問題「傷口に塩」 沖縄戦PTSD 次世代に悪影響も


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沖縄戦のPTSDについて論議した一橋大学主催のシンポジウム「心の傷をめぐる歴史経験―語りと追悼」=20日、東京都国立市の一橋大学

 【東京】一橋大学の平和と和解の研究センター主催シンポジウム「心の傷をめぐる歴史経験―語りと追悼」が20日、同大であり、沖縄戦と心の傷について、精神科医の蟻塚亮二氏と早稲田大学琉球・沖縄研究所の北村毅客員准教授が報告した。

 沖縄での臨床経験がある蟻塚氏は、沖縄戦の体験が心的外傷後ストレス障害(PTSD)としてあり、高齢になってからうつ病や不眠などの症状として出てくる事例を紹介。「戦後も米国占領下にあって精神的被害に対するケアがなく、米軍基地問題や米軍機爆音などが心の傷口に塩をすり込むように、心の傷が癒えない」と指摘した。
 また親世代が戦争によるトラウマ(心的外傷)で子どもの養育の貧困、母子間の愛着の不十分さなどにつながり、子や孫の世代に悪影響を与えていると強調。「沖縄では戦争によって子ども、高齢者、障がい者に慢性的なネグレクト(養育放棄)状態に陥っている」と述べた。現在は福島県で東日本大震災の被災者支援に当たっている経験から「時間がたってから疾病が出る例など、沖縄と共通する部分もある」とケアの必要性を訴えた。
 北村氏は戦後も医療的ケアの薄さなど回復を妨げる要因によって発病した事例が多かった一方、見落とされたPTSDなどの問題を浮かび上がらせることが重要だと述べた。
英文へ→Battle of Okinawa PTSD symposium held at Hitotsubashi University