【島人の目】イギリスみたいなイタリアの夏


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 イギリスの詩人バイロンは「英国の冬は7月に終わり、8月に再び始まる」と詩をつづった。それは北国の長い冬を皮肉る形で、母国のはかない、光の乏しい、寂しい夏を嘆いた詩である。イギリスを含む北欧の夏はそれほどに短く、陽光は弱い。

 南国生まれの僕は、若いころ、ロンドンに足掛け5年住んだが、長い冬と短い夏が連続する気候の中で、少し健康を害したほどである。
 イギリスをはじめとする北欧の人々は暑い夏の輝きに飢えている。ここ南欧のイタリアの夏は、それら北の住人たちが激しく憧れる地中海域の光にあふれている。ところがことしは春から寒い雨の日が続き、それは一番美しい初夏の6月になっても変わらなかった。
 それどころか、一年で最も暑い季節である7月が終わろうとする今も、曇りや雨の日が多く、猛暑と呼べる日がほとんどない時間が続いている。
 暑気はそれなりに充満しているが、カッと照り付ける太陽が人々を魅了する、いつもの夏とは明らかに違うのだ。
 イタリアの夏は8月半ばごろに終わりが始まる。テンポラーレ(雷雨を伴う暴風)が頻繁に起こって暑気を吹き飛ばしてゆき、8月の末にもなると涼しさを通り越して肌寒い日さえある。もしそうなれば、イタリアの夏はあと2週間ほどで終わることになる。まるでイギリスの夏みたいに。
 もっとも最近は、温暖化の影響なのか10月まで夏のような日々が続く年もあるから、まだまだ希望はあるのだけれど…。
(仲宗根雅則、TVディレクター)