『ローン・レンジャー』 大味な活劇か!?と思いきや…


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 『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのデップ様&監督が、米国の人気西部劇ヒーローを今に甦らせたアクション大作。また大味な活劇か!?と思いきや、野心的な内容に驚いた。

 遊園地の片隅にある米国開拓史資料館で、見せ物のように展示されている先住民トント(デップ)の回想で語られるのは、鉄道事業開発の裏側で先住民の土地がいかにして白人に奪われたか?という悲しい歴史。それをミッキー・マウス印の映画会社で、派手な活劇を満載し、しれっと娯楽作として見せてしまうとは。宮崎駿監督『風立ちぬ』が“美しくも呪われた”空を飛ぶ夢を描いているなら、本作はその鉄道版だ。
 デップ様自身、先住民の血を受け継いでいる。初監督作『ブレイブ』は、貧困でアルコールに溺れる先住民の現実を描いていた。ゆえに本作に賛同したのだろう。復讐心にとらわれているトントと、暴力ではなく法で悪事を裁こうとする検事ジョン・リードがコンビを組むという構図も、物語に深みを与えている。
 監督&デップ様は『ランゴ』でも水をめぐる利権争いを、これまたしれっとアニメで描いていた。『パイレーツ~』で得た大金と知名度を映画の未来のためにどう生かすか? 作品を通して見える気骨のある2人の姿勢に惚れた。★★★★★(中山治美)

 【データ】
監督・製作:ゴア・ヴァービンスキー
製作:ジェリー・ブラッカイマー
出演:ジョニー・デップ、アーミー・ハマー
8月2日(金)から全国公開
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

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中山 治美