オスプレイ追加配備 負担軽減進まず、「抑止力増」に疑問も


社会
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追加配備で山口県の米軍岩国基地からごう音を鳴り響かせながら普天間飛行場に到着した2機のオスプレイ=3日午後4時40分ごろ、宜野湾市

乏しい軍事的合理性

 米軍普天間飛行場への垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機の追加配備が完了すれば、昨年10月の最初の配備と合わせて所属機は24機となる。配備に当たり日米両政府はオスプレイの「安全性」に加え、日本と周辺地域の安全保障に果たす「抑止力」の観点などから意義を強調し、配備への理解を迫ってきた。

だが説明はいまだ十分とは言えず、輸送機であるオスプレイの役割については米国の専門家からも冷めた指摘がある。追加配備で沖縄の負担はさらに増すが、昨年の配備前に約束していたはずの負担軽減策はまだ実現しておらず、道筋も不透明だ。

◆「飛躍的に向上」

 「日米同盟をさらに強化させることができる。日本の防衛ほか人道支援、災害援助活動が飛躍的に向上する」。オスプレイ2機が山口県の米軍岩国基地から飛び立った後、普天間飛行場駐機場の一角で、第1海兵航空団司令官のスティーブン・ラダー准将は配備の必要性について力を込めて記者団に説明した。
 説明直後、雲の合間からオスプレイが飛来。米軍関係者は一様に機体を見詰めた。この日岩国からは4機が飛び立つはずだったが、結局飛来したのは2機。ラダー氏はその理由について「運用上の理由から本日は2機となった」とだけ述べ、残りの10機の配備日程なども含めて詳細を明らかにしなかった。

◆米専門家は否定

 防衛省は7月に決定した2013年度版防衛白書で、沖縄に配備された米軍オスプレイについて「在日米軍の抑止力が強化され、地域の平和と安定に大きく寄与する」と記載した。
 日本政府はこれまで北朝鮮の核・ミサイル開発や尖閣をめぐる問題など、日本周辺の安全保障環境が厳しさを増しているという状況説明に絡めて、オスプレイ配備の有用性について強調してきた。だがオスプレイが「地域の平和と安定」に果たす具体的な役割について説明があるわけではない。
 兵員や物資を輸送するオスプレイが有事や平時の際の「抑止力」としてどのように機能するのか。米国内からは「たった24の輸送機で抑止力が向上するという主張はばかげている」(米国軍事評論家のカールトン・メイヤー氏)といった指摘も挙がる。

◆負担軽減に逆行

 3日、追加配備されたオスプレイ2機を確認した宜野湾市の佐喜真淳市長は「安全保障上必要なものは国民全体で応分に負担すべきだ」と述べ、政府が唱える「負担軽減」に逆行していると強い不快感を示した。
 昨年10月の最初の配備前に日米両政府は、オスプレイが県外で行う低空飛行訓練とは別に、沖縄の負担軽減を目的に県内で実施される訓練の一部の県外移転を検討することで合意。だが昨年中の開始を目指していた訓練移転のめどは立っていない。橋下徹大阪市長らによる八尾空港での訓練一部受け入れ表明後の反応に見られるように、実現は難航が必至だ。
 県は「訓練移転などが進まない中での追加配備は遺憾」と反発を強めている。負担軽減の道筋が見えず、軍事的合理性からの説明も乏しい中で、配備は再び強行された。(池田哲平)