米軍キャンプ・ハンセン内で5日発生したHH60救難用ヘリコプター墜落事故では、米軍から関係自治体などへの通報や報道発表が遅れ、混乱を来した。沖縄防衛局から事故が起きた宜野座村や県に正式な連絡が入ったのは発生から約2時間後の午後6時すぎで、通報体制の改善、検証を求める声が高まっている。
日本政府は村から「黒煙が見える」との通報を受け、初めて事故を把握。だが米軍からの通報はなく、防衛局からの在沖米軍への問い合わせで確認した。安倍晋三首相に一報が入ったのは、発生約1時間後の午後4時57分だった。
一方、県警本部は石川署ほか独自ルートで情報を収集したが、錯綜(さくそう)し、正確な事実関係を得るのに時間を要した。
日米両政府は1997年に在日米軍による事件・事故の通報体制を定めた。ただ基地内で発生した事故については、米軍が地域住民に影響を及ぼす可能性があると判断した場合に「好意的通報」を行うとし、米軍が「影響ない」と判断した場合は連絡の必要はない。
防衛省幹部は「基地内の事故について連絡の定めがない。日本側が通報を求めても強制力はない」と、あくまでも米側の判断に委ねられていると説明する。
2004年の米軍ヘリ沖国大墜落事故を受け、両政府は05年に米軍航空機事故に関するガイドライン(指針)を作成。通報体制も定めたが、その対象は基地外の事故に限られている。
7日の自民党外交・国防部会では「情報がないから不安や不信が高まる」と不満が相次いだ。「住民が気付き、事故が分かったのではないか」との指摘も出た。
今回の事故で、基地内で発生した際の米側から日本側への通報手続きの未確立な点の問題点があらためて露呈した。米軍の裁量による現状の通報体制では、緊急時などに周辺住民らに伝えるべき最低限の情報も伝わらない恐れもある。基地内で発生した場合のルール確立が求められる。
(問山栄恵)