第95回全国高校野球選手権大会第4日の11日、甲子園球場で行われた1回戦で沖縄尚学などが勝ち上がった。第9日の2回戦は沖縄尚学―弘前学院聖愛、西脇工―木更津総合の組み合わせ。
沖縄尚学は先発の宇良淳と継投した比嘉健一朗の調子が上がらず、5回までに5失点と苦しい戦いを強いられた。しかし打線は相手投手の140キロ台の直球にタイミングを合わせ、徐々に点差を詰めた。六回に同点に追いつき、七回に逆転に成功した。九回に1点差まで詰め寄られたが、逆転を許さなかった。沖縄県勢は春夏通算90勝目。比嘉公也監督は、指揮官としては夏初勝利。弘前学院聖愛は一戸のソロ本塁打などで着々と加点し、小野が玉野光南(岡山)を4安打に封じて6―0で快勝した。青森県勢は春夏通算50勝。一回に先制された西脇工はその裏、村上の2点二塁打で逆転。四回にも2点を追加し、石見智翠館(島根)に4―1で勝った。木更津総合は五回に一挙7点を奪い、春夏通じて初出場の上田西(長野)を7―5で下した。
◆切り札山城 こん身投
最後は136キロの直球だった。九回表2死二塁。七回からマウンドに立った2年生右腕の山城大智は3連打を浴びて1点差に詰め寄られ、なおも一打同点のピンチを迎えていた。打席には福知山成美の仲村渠康太。2ボール2ストライクから投じた外角の球を仲村渠が見逃すと、球審の腕が上がった。「普段は感情を表に出さない」という右腕が、大きくガッツポーズをした。
県大会ではわずか1イニングの登板ながら結果を残し、比嘉公也監督から「山城がキーマンになる」と厚い信頼を得た。先発の宇良淳、継投した比嘉健一朗が共に調子が上がらず、試合終盤の大事な場面でマウンドに送られた。「この場に立てることを幸せに感じて、思い切り行こう」。七回は1死満塁のピンチを迎えたが、伝令でマウンドに駆けつけた比嘉から「一つのアウトをしっかりと慌てずに取ろう」と言われた。「バックを信じて全力で投げよう」と気持ちを切り替え、後続を連続三振に仕留めた。
山城は「全体的に球が荒れていたが、直球で押せたことは良かった」と課題と収穫を手にした。「次の試合ではもっと落ち着いた投球がしたい」。大舞台のマウンドでまた一つ成長した右腕が、力強く語った。(平安太一)
◆6番・平良/悔しさ晴らす逆転打
春の選抜大会の苦い思い出を、自らのバットで振り払った。沖縄尚学の6番・平良勇貴が二塁打2本を含む3安打を放つ大活躍を見せ、甲子園を沸かせた。走っては2盗塁を決め、「チームの勝利に貢献できて良かった」。試合の緊張から解き放たれ、日に焼けた顔をほころばせた。
甲子園に懸ける思いは誰よりも強かった。選抜大会では失策に絡み、力を出し切れないまま球場を後にした。「自分のプレーで負けてしまった」。責任を感じ、守備練習を基本からやり直した。素振りも毎日欠かさずに続け、「この夏は自分がチームを救う」と心に決めた。
県大会では勝負強い打線でチームを勝利に導き、再び甲子園への切符を手にした。「(甲子園には)リベンジのつもりできた」。熱い思いを胸に抱き、大舞台に立った。同点で迎えた七回1死一塁で左中間を破る二塁打を放ち、逆転の走者を本塁にかえした。「(リリーフした)2年生の山城が頑張って投げていたから打線が援護しようと思った」と気迫のこもった一打だった。八回には直球を中前にはじき返し、貴重な追加点を奪った。
「春の悔しさがあったからチームも自分も大きくなれた」。敗戦を乗り越え、大きく成長した姿が甲子園に輝いた。「次も自分たちの野球をしたい」。持てる力を出し、次戦も勝利を目指す。(平安太一)