HH60ヘリ飛行再開 米軍 災害時の実績強調 県、市町村 日米政府に不信


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
墜落したHH60ヘリコプターと同型機の前で、事故後の整備状況などを説明する米軍の担当者ら=14日午前、米空軍嘉手納基地

 米軍HH60救難ヘリコプターの宜野座墜落事故を受け、沖縄側が強く求めていた原因究明までの間の飛行中止要望が無視される形で、同型機の飛行再開が決まった。14日に整備状況を公開した嘉手納基地の担当者は、同型機の整備を徹底したと強調。東日本大震災時の被災地支援「トモダチ作戦」でも使用した実績に触れ、配備再開の意義をアピールした。一方、「原因究明までの飛行中止を申し入れた」はずの日本政府も米側の飛行再開を追認。県や関係市町村には両政府に対する憤りと不信感が募った。

 「大震災18時間後にHH60ヘリ5機が現地で支援の活動に当たった」
 嘉手納基地の同型ヘリの整備状況を報道陣に公開した第33救難中隊のマイケル・キングリー大尉は東日本大震災やスマトラ沖地震でのHH60の出動実績を縷々(るる)説明した。

■「通常の3倍」
 記者団からは事故原因や地元の懸念に関する質問が相次いだが、キングリー氏らは、「通常の空軍の点検より3倍の時間をかけた」と整備状況の説明を繰り返し、質問をけむに巻いた。
 嘉手納基地の担当者は同日、事故が起きた宜野座村や県にも災害時におけるHH60の必要性を熱心に説いたが、事故原因について一切語らなかった。
 県の又吉進知事公室長は「安全性に不安を抱えたまま飛行を再開することになる」と憤り、県民感情の悪化は避けられないとの見方を示した。
 県幹部は「再開決定は大変残念だが、これまでの米軍の姿勢を見る限り、さほど驚きはしない」と怒りを抑えた。日米両政府との溝は深まる一方だ。

■「やむを得ない」
 事故後、日本政府は当初「原因究明と再発防止がしっかりするまで(同型機は)飛ばさないでほしい」(小野寺五典防衛相)と、県民感情に配慮する姿勢を表明。だがこの日の飛行再開の通知に対し、米軍による安全性確認と訓練の必要性などを挙げ、飛行再開方針をあっさり認めた。
 防衛省地方協力局は「構造的な欠陥も発見されていない。捜索救難の練度が落ちる懸念を考えれば再開は理解できる」と話す。
 ただ「地元に目配せをするよう米側には求めていた」として、米側が5月のF15墜落事故の時とは異なり、飛行再開に際して地元への説明の場を設けるなどの対応を見せたことを評価している。
 飛行再開について防衛省幹部は「米軍の運用なのであり、やむを得ない」と述べ、米軍の運用を制限することには限界があるとの立場を隠さなかった。
(池田哲平、問山栄恵)