小野寺防衛相来県 県に“懐柔策”も不発


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
(左)オスプレイ配備に重ねて懸念を示す仲井真弘多知事=7日、那覇市内のホテル(右)訓練移転を「負担軽減の第一歩」と語る小野寺五典防衛相=7日、那覇市内のホテル

久辺3区の区長と懇談 「辺野古」地ならし

 オスプレイの高知、滋賀両県への訓練移転と認可外保育所への防音工事の予算化を“お土産”として来県した小野寺五典防衛相は、基地所在市町村から要望の強かった認可外保育所への防音工事に関連して北谷町の保育所を視察するなど、成果を前面に押し出す姿勢が目立った。

これに対して、仲井真弘多知事は訓練移転に一定の評価を示しつつも、配備に反対の立場を重ねて強調。オスプレイの追加配備に県側の理解を得る懐柔策は、不発に終わった印象が強い。
 小野寺防衛相は名護市の久辺3区(辺野古、豊原、久志)の区長らとも面談した。米軍普天間飛行場の辺野古移設に向けた埋め立て承認申請が県に提出される中、知事の許認可の判断前に移設予定地の近隣区長らと面談することで、移設に向けて外堀を埋める作業にも奔走した。

■程遠い負担軽減

 知事との会談後、小野寺防衛相は訓練移転が「沖縄の負担軽減につながる第一歩だ」と強調。今後も訓練の移転を進めていく考えを重ねて示し、沖縄側の理解を迫った。
 だが、県側の要望は訓練移転だけではなく、オスプレイの本土への分散配置を求める姿勢がより強固だ。仲井真知事は県議会2月定例会の県政運営方針でも、本土への分散配備を求める立場を明確にしている。
 今回の訓練移転への評価について、仲井真知事は「中身まで正確に分からないので答えにくい」と明言を避けた。県幹部の1人も「訓練の移転と言われても、沖縄への影響がどうなるのか不透明だ。負担軽減にはまだまだ程遠い」と指摘した上で、「オスプレイ追加配備を容認することはできない」と語る。
 知事が会談後の会見で「(日米合意に沿った飛行は)事実上ああいうものは無理だ」と語ったように、オスプレイ配備における安全策として決定した日米合意はなし崩しになっている。
 米海兵隊は、今秋以降に普天間配備のオスプレイが完全な運用能力を持つとしており、24機のオスプレイ配備によって県民生活への負担は増加する見通しだ。こうした中での小野寺防衛相の来県は、具体的な負担軽減策を示し得ない現実をあらためて浮き彫りにしたと言える。

■ホテルで密談

 知事との会談で小野寺防衛相から知事に対して辺野古移設に関連した話題はなかったという。仲井真知事は夕食懇談の場での移設問題への発言も否定した。
 だが、小野寺防衛相はキャンプ・シュワブに近い名護市の久辺3区長や名護漁協の古波蔵廣組合長らをホテルに招いて懇談した。3区長らは懇談後、記者団に「ノーコメント」と述べ、足早に車に乗り込んだ。
 知事との面談で辺野古移設への言及を避ける一方、区長らと密談することで移設に向けた地ならしを着々と進める狙いも透けて見えた。
(池田哲平)