見えぬ負担軽減 オスプレイ県民大会1年


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普天間飛行場周辺を飛行する垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ=8月27日

 オスプレイ配備にノーを突き付けた県民大会から1年。県と全市町村や県議会、全市町村議会など県内の各界各層が配備撤回を訴え続けたが、「オール沖縄」の声を無視する形で日米両政府は8月に12機の追加配備も始めた。

昨年10月配備の12機から倍増となるオスプレイが県内を縦横無尽に飛び交うが、8月下旬には普天間飛行場に配備されている同型機が米本土で着陸に失敗し、炎上。安全性への不安がさらに高まる中、県民大会での誓いの実現に向けた新たな動きも模索されている。関係者の思いや1年間の動きを振り返り、今後を展望する。

 ◆本土で「防災」訓練拡大/沖縄向けアピール狙う
 米西部ネバダ州でのオスプレイの着陸失敗で安全性への懸念があらためて高まる中、防衛省は高知、滋賀両県で10月に行う日米共同訓練に沖縄配備のオスプレイを参加させると発表した。小野寺五典防衛相はこれをオスプレイの訓練移転の一環と位置付け、「沖縄の負担軽減につながる」と説明している。東日本大震災後に高まった地震や津波への国民の懸念を背景に、共同訓練や防災訓練など本土でオスプレイの運用を拡大させながら、沖縄の負担軽減と関連付けてアピールしようとしている。

■「理解得やすい」
 オスプレイの本土訓練拡大について、政府関係者は「まずは自衛隊との共同訓練で使用するのがいい」と力説する。小野寺防衛相は6日の記者会見で「大規模災害時の有効な救援活動の確立にも寄与する」と、有益性を強調した。
 防衛省幹部は「米軍単体よりも自衛隊との訓練であれば、地元の理解が得やすい。さらに防災となれば納得してもらえる」と訓練受け入れに自信をみせる。防災訓練に対する国民ニーズの高まりに「便乗」しようとする思惑もにじむ。

■強い危機感
 オスプレイ訓練移転先の一つとなった高知県。山間部には米軍低空訓練の「オレンジルート」を抱え、同機をはじめとした米軍機訓練に対する反発も根強い。
 一方、同県は南海トラフ巨大地震で甚大な被害が予想されている。国や県の想定では沿岸部の全市町村が津波に襲われ、津波高が全国最大の34メートルに達し、最悪の場合、県人口の5%を超える4万2千人が死亡するとされた。県民の地震への危機感はかなり強い。
 尾崎正直知事はオスプレイの参加に関して「安全上の懸念が完全に払拭(ふっしょく)されている状況ではない」としながらも「低空飛行訓練とは一線を画して議論すべきだ。防災訓練で輸送能力の確保が重要ということになれば、駄目だとはなり得ない」と複雑な心境を漏らす。

■部隊の分散を
 政府は防災目的を前面に押し出しながら今後全国にオスプレイ訓練への理解を求め、併せて「沖縄の負担軽減にもなる」とアピールしようとしている。
 だがオスプレイを運用する在沖海兵隊の部隊は第31海兵遠征部隊(31MEU)の一部として1年の半分は海外に出掛けており、国内で完全な運用能力を有していない。災害時のオスプレイの役割については、まだ十分検証されていない。
 一方で県などがそもそも求めていたのは、部隊そのものの分散配置だ。数日間沖縄を留守にする「訓練移転」が負担軽減にどうつながるのか不透明で、むしろ沖縄を拠点にオスプレイの運用範囲が全国に広がっていくようにも映っている。
(池田哲平、村上和陽、問山栄恵)

<1年間の動き>
 2012・7・23 米軍岩国基地にオスプレイ12機が陸揚げ
 9・6 米ノースカロライナ州の市街地にある空き地にオスプレイが緊急着陸
 9・9 宜野湾市で「オスプレイ配備に反対する県民大会」。主催者発表で10万人以上が結集
 9・13 県民大会実行委が防衛相らに決議文を手渡し、配備撤回を要求
 9・19 日米合同委員会でオスプレイ安全確保策に合意。政府が「安全宣言」
 9・21 山口県でオスプレイが国内初飛行
 9・29 抗議行動で野嵩、大山、佐真下の主要3ゲートが全て封鎖される
 10・1 オスプレイの普天間飛行場への配備を開始。6機が普天間に着陸 県議会が配備反対を求める緊急抗議決議を全会一致で可決
 10・2 普天間飛行場に新たに3機が飛来
 10・4 オスプレイが初訓練。伊江島、北部へ飛行、発着を繰り返す
 10・6 オスプレイの配備完了
 10・23 オスプレイの配備後初めて夜間訓練
 12・25 日米合意違反が318件目撃されたとして県が政府に実態を調査し公表するよう要請
 2013・1・27 県内全41市町村と議会、県民大会実行委の代表者らが東京で抗議集会。4千人が配備撤回求める
 1・28 県民大会実行委の代表と市町村長らが「建白書」を安倍晋三首相に手交
 2・5 普天間飛行場から離陸したオスプレイから宜野湾市の民間地に飲料水ボトルが落下
 4・30 日米防衛首脳が会談。オスプレイ12機の追加配備を表明
 7・30 県が指摘した日米合意違反について防衛省が「違反なし」と回答
      追加配備のオスプレイ12機が岩国基地に陸揚げ
 8・3 追加配備のオスプレイ2機が普天間飛行場に移動
 8・5 宜野座村で米軍ヘリ墜落。追加配備延期に
 8・12 配備が延期されていたオスプレイ9機が普天間飛行場へ移動
 8・27 米ネバダ州で訓練中のオスプレイが着陸失敗事故