【島人の目】TPP参加に一言


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 TPP推進論者は、日本のTPP参加はグローバル化と自由貿易の促進で競争力が増し、生産性が向上してGDPが増加し日本経済が潤うと言う。そして海外との競争で、肉や米、野菜などの農作物が安くなるので消費者にとってはメリットがあると主張する。しかしである。大手の企業が潤い、消費者の家計が助かる事よりもっと深く考えなければいけない命に関わる問題の介在に注視するべきである。

 結論を先に言えば、アメリカからの輸入肉類、農作物の食の安全面は十分ではなく、日本人の健康をむしばむ可能性もあるので、TPP参加には反対を唱えたい。
 沖縄に里帰りする度、沖縄のスーパーには米国からの農作物や肉類などが年々増えているように感じる。行きつけのスーパーに行く度、カートに輸入野菜、果物、肉類を買っている人に「薬漬けなので買わないで」と言いたくなる。特に子ども連れの家庭に。
 日本へ輸出されるアメリカの農作物は栽培中に多量に農薬が使われるが、収穫後にも日本へ輸出される野菜、果物に保存、殺菌、殺虫のための農薬が高い濃度で使われている。
 それらのポストハーベスト農薬には米国内で使用が禁じられている防カビ剤OPPやTBZなどが使われ、それは「枯葉剤」と同様な成分で発がん性があると言われている。ある文献では日本での残量農薬の検査は非常に甘いと言われ、日本での規制農薬以外の殺虫剤キャプタンなど(発がん性あり)は高濃度でも検査に通り、キャプタン使用のイチゴや大豆などは問題なしとされ、日本国民に食されている。
 米国の畜産物は幾種類もの抗生物質とホルモン剤漬けにされ、飼育場に詰め込まれて運動もせずに衛生上、劣悪な状態で育てられている。米国の飼育、処理、加工の食用家畜生産の工程の現場はふんまみれで病原菌が撒(ま)き散らされ、多剤耐性菌の培養場と化している(ドキュメンタリー映画「Food Inc.」をご覧あれ)。EUはがんを引き起こすホルモンを投与された米国産牛肉を1995年に輸入を禁止している。
 米国はEUに拒絶された危険な肉類、さらに農薬漬けの恐ろしい農作物を日本へ売ろうと躍起になり、日本のTPP参加に圧力をかけているわけだ。まさに「死の商人」ではないか。真の豊かさとは自然の摂理にかなった安心、安全な食材を日々の糧にする事だと思う。
(鈴木多美子、米バージニア通信員)