2014年5月に任期満了を迎える沖縄市長選で、現職の東門美津子氏(70)が出馬せず、勇退する意向を関係者に伝えた。東門氏は副知事や衆院議員を務めた革新勢力を代表する政治家。突然の不出馬表明で市議会与党議員に動揺が広がった。
一方、対立候補擁立を模索する保守系の野党側は、現職不出馬を受けて「市長選候補者の選定作業が加速する」(野党市議)と勢いを増す。8カ月後の市長選を見据え、与野党は水面下で候補者擁立に向けた作業を本格化させる。
11日夜、沖縄市内の飲食店。東門氏に呼ばれて与党幹部らが集まっていた。
「再選した時に、2期目で辞めることを決めていた」。東門氏からの突然の告白に幹部らは戸惑ったが、「市長の決意は固い」(与党幹部)として、決断を受け止めた。東門氏は会食に先立ち、社民党県連と社大党の関係者にも同様に伝えていた。
東門氏は与党側に対し、12日に開会した市議会9月定例会で、次期選挙の進退を明確にすることを伝えていた。市街地活性化の事業を多数手掛けていただけに、与党市議は「3期目に向けた出馬表明だと思っていた」と驚きを隠せない。突然の勇退表明に、ある与党市議は、空転を重ねて停滞感漂う市議会に触れ、「野党多数の議会運営に疲れていた」と明かす。
東門氏が方針転換して推進した泡瀬沖合埋め立て事業も影を落とす。過去の選挙で東門氏を推薦した共産党は、同事業で反対の立場にあり、現在は与党から距離を置く。別の市議は「次期選挙で共産の協力を得られるか分からない。厳しい戦いになると予想したのでは」と推し量る。
東門氏は後継候補が出馬する環境を整えるため、早期に勇退表明したとみられる。後継には島袋芳敬副市長や玉城満県議などの名前が挙がるが、「選定作業は未着手」(与党市議)だ。
一方で、野党側は勢いを増す。今月には候補者選考委員会を立ち上げ、早ければ10月中にも候補決定の構え。野党市議は「現職の不出馬で新人対新人の戦いになる。早期に候補者を選定して、与党の機先を制したい」と意気込む。陣立ては、国政与党の自民、公明に野党市議を加えた保守一本化だ。別の野党市議は「保守が固い一枚岩となり、市政奪還を目指す」と息巻いている。(宮城征彦)