予算減の影響不可避 米海兵隊の遠征軍縮小


社会
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<米海兵隊の概要>※防衛省資料などを基に作成

 米国防費の強制削減を受け、海兵隊が沖縄を含めて世界に三つ配備している海兵遠征軍(MEF)を一つ減らすことが明らかになった。米ノースカロライナ州の第2MEF司令部を廃止してバージニア州の海兵隊総軍へ統合し、同地に残る航空部隊や補給部隊はMEFよりも一回り規模が小さい海兵遠征旅団(MEB)として独立運用する計画だ。担当するマッケンジー少将は沖縄の第3MEF傘下にある第3MEBに関して「組織再編の下で独立した司令部を持つはずだ」と発言。在沖海兵隊も上部司令部から切り離す形で改編する可能性を示唆している。

 海兵遠征軍(MEF)とは海兵隊最大の編成単位(2万~9万人)。米西海岸カリフォルニア州(第1)、米南部ノースカロライナ州(第2)、沖縄・うるま市(第3)の世界3地域に司令部を置いているが、今回の再編案は、国防費の強制削減によって海兵隊も大幅な兵員削減や組織再編が避けられないことをあらためて示している。
 遠征軍の縮小計画は、海兵隊の配置戦略を担当するマッケンジー少将が19日に行った講演で明らかになった。ただ沖縄の「3MEF―3MEB」の駐留態勢に関しては、2MEFの司令部廃止のような踏み込んだ説明はしておらず、現段階では不透明な部分も多い。
 同氏は一方でカリフォルニアの1MEFは現態勢の維持を明言した。財政難の下、米議会は6月、基地の整理縮小策に関し、米本土の基地維持を優先するよう政府に求めている。
 背景には基地や部隊の再編に伴う雇用などへの懸念があるが、1MEFはアジアや中東に派遣しやすい米西海岸に存在することなどから、海兵隊も戦略的な「最優先MEF」と位置付けていることがうかがえる。
 他方、在沖海兵隊をめぐっては米軍事戦略に大きな影響力を持つランド研究所が、MEBよりもさらに小規模な海兵遠征部隊(MEU、2千人程度)を除く大部分を米本土に戻しても、危機の際にはカリフォルニアから応援部隊を増派する形で「展開能力にはわずかな影響しか及ぼさない」との報告を示している。
 報告書は国防総省の委託で作成している。在沖海兵隊の「地理的優位性」に対する疑問を米国の専門的見地から裏付け、実際は幅広い配置の選択肢があることをあらためて示したものといえる。
 今回のMEF再編案は、現在の海兵隊の約19万5千人の兵力を17万4千人に削減することを前提とした内容。だがヘーゲル国防長官は海兵隊を最少15万人まで減らす可能性にも言及している。国防費削減による在沖部隊への影響が今後さらに広がることも想定される。
 (島袋良太本紙ワシントン特派員)