【島人の目】救世主登場で起きた奇跡


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 4月から始まった米大リーグ。ナショナルリーグ15球団、アメリカンリーグ15球団がしのぎを削る。ナショナルの西部地区に属するロサンゼルス・ドジャース球団はここ4、5年鳴かず飛ばずの成績で、名監督を就任させても一向に代わり映えせず、低迷していた。

 シーズンが始まって2カ月後、ドジャースは5月31日には西部地区最下位、トップチームとのゲーム差は10ゲーム。ほとんど挽回不可能なゲーム差にファンをはじめスタッフは思案にくれた。マジック・ジョンソンはじめ球団オーナーは、ことしこそ地区のみならず全米制覇を目指し、全球団最高額の資金を使って優秀な選手らをかき集めたが、結果は惨めであった。
 トップクラスの名選手のけがに泣かされ、スランプ(不振)にあえいだ。球場はがら空き状態だった。
 6月2日、救世主が登場し、奇跡が起きた。キューバ出身の外野手ヤシエル・プイグ(22)がスパークプラグ(火付け役)を演じ、チームを盛り上げた。入団1カ月で打率7割強、ホームラン7本。ファン投票でオールスター選手に選ばれたが、コーチは「早すぎる」との理由で出場を却下した。
 ドジャースは8月終了時点で西部地区のトップにのし上がり、2位との差を10ゲームも離してしまった。80勝55敗と全メジャーリーグ30球団の中でもトップクラスの躍進ぶりで、破竹の勢いは止まらず、同地区で4年ぶりに優勝した。ことしは韓国出身のヒュンジン・リュー投手(新人、13勝5敗)の好成績も見逃せない。球場は連日満員の観客でにぎわっている。
 メジャーリーグは世界のプレーヤーに目を向ける。特にラテン系の国は優秀選手の宝庫だ。ドミニカ共和国やキューバ、ベネズエラ、プエルトリコ、メキシコなどである。ちなみにキューバとアメリカは直接の交渉がなく、プイグのメジャー入りは難航したが、ことしやっと実現した。
 契約金は4200万ドル(42億円)で、ドジャースにとって幸運となった。今後の課題は、ドン・マッティングリー監督はじめ他選手とこのやんちゃ坊主の荒馬プイグが、いかにうまくチームワークを発揮できるかにかかっている。彼は恐らくルーキー賞を獲得し、ドジャースは全米チャンピオンに輝くだろう。
(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)