辺野古埋め立て 県、防衛局に73質問 知事判断にも影響


社会
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米軍普天間飛行場の代替施設建設に向け、埋め立てが予定される名護市辺野古周辺の海域=2013年3月16日

説明不足、国の責任追及

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けて国が提出した埋め立て申請をめぐり、県が4日、沖縄防衛局に提出した質問事項は31項目73問にも上った。県が進める申請書の内容判断に向けて、必要があれば質問を国に行うことは定められた手続きの一つ。だが、しっかりした説明責任を果たしてこなかった国の姿勢を追及したとも取れる質問も多い。

回答次第では、仲井真弘多知事が「(今年)12月以降」とする埋め立て承認申請の可否判断に大きな影響を与えそうだ。
 質問書を送付したのは県の海岸防災課と漁港漁場課。県が参考にしたい情報や不明点など、内容判断に向けてより詳細に確認する必要があるとして送ったものだ。担当者同士が面談や電話などで確認するのが通常だが、項目が多く所管が複数の部署にわたるため、一括して文書での回答を求めた。

■市民団体も重要視

 質問書は国が埋め立て申請をする以前の昨年4~6月に実施した調査に関し、辺野古沖でジュゴンの食(は)み跡が確認されたことを受けたジュゴンの保全対策や、埋め立てに用いる土砂に対してより詳細な説明を要求。同様な指摘は自然保護団体などが国に何度も説明を求めてきたにもかかわらず、事実を隠したり明確な回答を避けていた内容で、国会の委員会質疑などでも取り上げられつつある。
 ほかに辺野古の代替施設が米国の設置基準で設計されている内容についても照会。護岸などの設計の考え方や辺野古漁港内の作業ヤード埋め立ての面積算定方法もただしている。
 特に埋め立て土砂に関する指摘は、自然保護団体も重要視してきたものだ。那覇空港の滑走路増設では土砂は全て県内から調達する予定だ。同滑走路増設の環境影響評価書に対し、8月5日に環境相が提出した意見で、埋め立て用材や緑化資材を使う際の注意点に「島外からの生物の移入は、遺伝子レベルの生物多様性にかく乱を生じさせる恐れがある。このため、島しょ部の生物多様性の保全に十分配慮すること」と求めている。

■生態系影響を懸念

 沖縄総合事務局はこの環境相意見を踏まえ、土砂調達先を県内に限定する構えだ。一方、辺野古への埋め立て申請では、県外からも大量に調達することが前提だ。県外から運んできた土砂に含まれる動植物が、辺野古沿岸域の生物や環境へ与える影響も懸念される。県は今回、こうした観点も踏まえ、県外から調達した土砂を埋め立てに使うことで、環境面への影響をどう抑えるのか具体的な方法も質問している。
 県の當銘健一郎土木建築部長は「補正とは違い、申請書の内容を確認する。件数が多く、関心が高いことから文書で(防衛局に)送付し公表した」と説明。回答を踏まえ、さらに内容審査を進める考えだ。
 一方、市民団体ジュゴン保護キャンペーンセンターの蜷川義章事務局長は「これまで私たちが質問してきたが、回答がなかった内容で、最低限必要なものだ」と指摘。「特に県外から調達する土砂内に含まれる外来種は、沖縄の生態系を壊しかねない重大な問題だ。回答してもしなくても、普通なら埋め立ての許可は不可能だ」と指摘した。
 (古堅一樹、宮城久緒)