知事・2大臣会談 政府の思惑不発 普天間「県外」重ねて要求


社会
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県、負担軽減に懐疑的

 そろって来県した岸田文雄外相、小野寺五典防衛相との会談で、仲井真弘多知事が強い言葉で米軍普天間飛行場の県外移設をあらためて要求した。日米両政府が新たに合意した基地負担軽減策に加え、犯罪米兵処分の通知見直しに関する日米地位協定の運用改善を「手土産」にした訪問は、不発に終わった格好。

政府側は「雰囲気は決して悪くなかった」(小野寺防衛相)と振り返ったが、名護市辺野古移設に向けた埋め立ての可否判断時期が迫る中、県側は厳しい姿勢を突き付けた。

◆実効性を疑問視

 会談で外相らは先の日米安保協議委員会(2プラス2)の合意内容を説明し、沖縄の負担軽減策への取り組みをアピール。これに対し仲井真知事は「一歩前進した」と一定の評価をしつつ、「具体的な部分を示してほしい」と合意の実効性についてしつこく質問。報道陣に公開された約8分間の冒頭部分でも、要望を伝える言葉が目立った。
 同席した県幹部は「国の努力姿勢は評価できるが、今回示された内容だけではまだ納得できない部分がある」と、知事の態度を解説してみせた。
 過去に沖縄の負担軽減策として日米が合意した航空機騒音規制措置などを見ても、米側に裁量権が委ねられ、合意はほとんど順守されていない。県庁内では今回の2プラス2合意に加え、犯罪処分通知の見直しについても「実効性はどうなるか分からない」(幹部)と懐疑的な見方が上がっている。
 別の県幹部は「今回新たに辺野古移設の理由について『政治的に』との文言が入るなど不透明な部分が多い。『唯一の解決策』という理由を今後とも追及していく」と県外移設の主張を堅持する姿勢を強調した。

◆一つ一つ

 政府はこれまでも負担軽減への努力姿勢を何度もアピールしてきた。だが沖縄側が強く反対している垂直離着陸輸送機オスプレイの強行配備や、米軍ヘリコプター墜落事故などもあり、そうした取り組みはかすみ、沖縄との距離は遠のく感さえある。
 だが移設の埋め立て是非に対する仲井真知事の判断が迫り、さらなるアピールに躍起にならざるを得ない。政府関係者は「今回のような運用改善や、合意した負担軽減策を一つ一つ重ねるしかない」と強調する。
 来年1月にある名護市長選では、移設に強く反対する現職の稲嶺進市長が出馬を表明しているが、対抗馬の擁立は難航している。移設実現に向けて安倍政権は、埋め立ての是非に対する態度をまだ明確にはしていない知事の軟化に期待するほかない。
 防衛省幹部は「知事が承認すれば、名護市長が反対しても法律上、埋め立てはできる」と強気の構えを崩さない。政府は埋め立て判断をにらみ、今後も知事の軟化を促すためのてこ入れを硬軟両様で強める構えだ。
(池田哲平、問山栄恵)