宮城新昌氏の顕彰碑、石巻で再建 カキ養殖の父


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「世界のカキ王」と呼ばれた大宜味村出身の宮城新昌氏の新たな顕彰碑と関係者ら=13日、宮城県石巻市荻浜

 【宮城県で田吹遥子】大宜味村出身で宮城県石巻市からカキ養殖を広めた宮城新昌氏をたたえる顕彰碑が13日、同市荻浜に再建され、除幕式が開かれた。2011年の東日本大震災で壊れ、再建が進められていた。

宮城新昌氏

震災から2年半の現在もいまだ厳しい生活を強いられている荻浜の漁業関係者や住民。浜のシンボルとなる顕彰碑の完成で、復興に向けて新たな出発を切った。石巻市と大宜味村の関係者は再建を機にあらためてつながりを強めており、両地域の継続的な交流を誓った。
 式には荻浜の漁協関係者やカキ加工業者、宮城氏の一族など約80人が集まった。再建の寄付金を集めた大宜味村からは島袋義久村長ら13人が参加した。顕彰碑再建委員会委員長で県漁協の伏見眞司代表監事は「大宜味村やボランティアなどの協力のおかげでここまで早く完成できた」と感謝を述べ「ここからはい上がっていかないといけない」と意気込んだ。
 新しい顕彰碑は高さ約2・5メートルで、カキをかたどっている。以前あった石巻市役所荻浜支所の跡地に新たに造られた。壊れた顕彰碑も同じ場所に飾られ、新旧の顕彰碑の間には石巻市と大宜味村の絆を示す説明版が設置された。
 大宜味村は2012年12月、再建に向けて「宮城新昌氏・宮城一族の功績をたたえる顕彰碑建立を推進する大宜味村委員会」を設置した。宮城氏の親戚で同村根路銘区の区長を務める宮城健隆氏の仲介で寄付金集めに協力した。村内外から約600万円が集まり、7月に荻浜の関係者に手渡した。村委員会共同代表の金城勇村議会議長は「世界のカキ王と呼ばれた宮城氏の功績を次世代に語り継いでいく。今後も石巻と大宜味が長くつながることを祈念したい」と話した。
 宮城氏の次女で食生活ジャーナリストの岸朝子さん(92)も除幕式に駆け付け「涙が出た。父も喜んでいると思う」と語った。
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<用語>宮城新昌氏
 1884年に大宜味村根路銘で生まれ、国頭農学校卒業後アメリカでカキの養殖に携わる。1927年に宮城県石巻市の荻浜湾と万石浦湾でカキ養殖を始めた。宮城氏が生み出した深海での養殖が可能になる「垂下式養殖法」が全国に広がり、後に「カキ養殖の父」「世界のカキ王」と呼ばれるようになる。

※注:宮城健隆氏の「隆」は、「生」の上に「一」