【島人の目】「オキナワニン」


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 私はだんなから「オキナワニン」とよく言われる。つまり、私の行動は彼にとって、スローペースみたいなのだ。自分では全くそう思っていない。いや、どちらかというとテキパキといつも動いているつもりなのだが。
 だんなはフランス人といっても半分以上スペイン系の血が流れていて、だからというわけではないのだろうが、頭の回転としゃべり、行動するときの速さは私の3倍で、いつもなぜか急いでいるスピードマンなのである。その性格に仕事のストレスが加わり、タバコとコーヒーがなければ生きていけない人、となると、それでまたスピードアップしてしまうようなのだ。
 ちなみに、フランスで飲むコーヒーはかなり濃い。ところが、そんな彼が沖縄に行くと、いい意味で、そのスピードが減速していくみたいなのだ。一番の理由は空気だろうか。力強い太陽の光を浴び、癒やしの海が近くにあるウチナーンチュの穏やかさ、その空気の中にいると、不思議に力がわき、それまで抱えていた不安がなぜか薄れ、「どうにかなるさー」「あまり急ぎ過ぎてもねー」、そんな気分になってしまうようなのだ。
 パリだけでなく東京でもそうだったけれど、みんなが仕事に追われ、疲れて、自分のことで精いっぱいといった雰囲気。そこへ、お互いに負のエネルギーを出し合って余計にイライラしている感じで、私もその中の一人になっていることが多いけれど、そんな時「オキナワニン」と呼ばれると、一瞬、心が沖縄へ移動したようで、なんだか気分が軽くなる。ヨンナーでもいいじゃないの、それぞれのペースがあるんだからさぁーと。
(与那嶺佐和子、フランス通信員)