米も情報管理強化 特定秘密保護法案


社会
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訴追急増、萎縮広がる
 政府は機密を漏らした公務員らへの罰則強化を盛り込んだ特定秘密保護法案を国会に提出した。安全保障に関する情報管理を強化する法整備は、米国が日本に強く促してきた。両政府は情報収集・共有でも協力を深めることを今月3日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で再確認している。法案は自衛隊の米軍との連携拡大、運用一体化と歩調を合わせた動きだが、一方の米国でも国家による情報管理強化や漏洩に対する厳罰化の動きが加速している。

 特定秘密保護法案をめぐる日米間の動きは2000年にその兆しが見える。日米安保に影響力を持つアーミテージ元国務副長官らが超党派で発表した対日政策提言「アーミテージ・ナイ報告」だ。
 00年の第1次報告は日米の防衛協力強化を提言した上で「日本の指導者は機密を守る新たな法制度について、世論と政治的な支持を得なくてはならない」と求めた。12年の第3次報告は「防衛省は安全保障に関する機密保全の法的能力を高める必要がある。現行制度は米国の水準を満たしていない」とより強く迫った。
 今年9月にワシントンで開かれたシンポジウムでズムワルト国務副次官補は「同盟では情報交換が極めて重要だ」と述べ、特定秘密保護法案を歓迎した。

取材源を特定
 米国では情報管理の強化が加速している。
 オバマ政権は発足後、1990年代のイランの核開発計画の機密を漏らした疑いなどで、既に8人をスパイ防止法で訴追した。同法による訴追はそれまでの歴代政権で計3人しかいない。1917年、第1次世界大戦への批判を封じるために制定された法律で、米国内でも悪評高く、抑制的に運用されてきたが、適用が急増している。
 機密を漏洩(ろうえい)した8人に加え、情報提供を受けた記者の通信記録も追跡調査した。報道機関は報道の自由の侵害につながると抗議している。米国が世界中で行っているとされる通信傍受の発達で、政府による取材源の特定が容易になってきている。

記者ら危惧
 ニューヨークに本部を置く「ジャーナリスト保護委員会」はこれまで独裁国家などの報道規制を強く非難してきたが、今月10日にワシントン・ポスト紙元副社長のレナード・ダウニー氏らによる報告で、米政府の情報漏洩(ろうえい)調査を批判した。
 報告書でニューヨーク・タイムズ紙安全保障担当のスコット・シェーン記者は「情報には機密か非機密かの『灰色』に位置するものも多い。しかし情報源たちは今や訴追を恐れ、灰色の情報すらも話したがらなくなっている」と語り、規制強化が取材に対する当局者らの“萎縮”効果を生んでいると指摘している。(島袋良太本紙ワシントン特派員)