【島人の目】イタリアの難民問題


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 イタリア最南端のランペドゥーサ島には、北アフリカからの難民が恒常的に押し寄せてくる。今月3日には難民500人以上を乗せた船が島の近くで出火、転覆して300人余が死亡した。一度の事故としては過去最大の犠牲者数だったため、日本を含む世界中のメディアで大きく取り上げられた。

 内乱や貧困を逃れてヨーロッパに移住しようとする中東アフリカの人々は後を絶たず、ランペドゥーサ島には2005~10年の間に年平均で約2万人が流れ着いた。また11年には、前年末にチュニジアで起きたジャスミン革命(アラブの春)の影響もあり人口5千人余の同島に、5万人近い難民が漂着、上陸した。
 漂流民が多く着くイタリアは、実はEU(ヨーロッパ連合)内における最大の難民受け入れ国ではない。が、この国にも合法・違法を含む難民や移民が激増していて、一部のイタリア人との間に摩擦が起きたりもする。
 イタリアを含むEUの難民対策の基本は、難民が不法にEU領域に入ってこないよう国境を防衛すること。現在のEUの法律では、漂流している難民を漁師らが勝手に救助することは禁じられていて、違反すると罰金を科されたり漁船を没収されたりもする。そのために難民ボートがいてもすぐには救助活動に結び付かず、遭難などの悲劇が頻発する。
 それに対する国際世論の批判や、EU自体の反省などもあって、難民対策の改善が今ようやく叫ばれつつある。イタリアの難民問題とは、実のところ、EU全体の移民問題にほかならないのである。
(仲宗根雅則、TVディレクター)