尖閣諸島をめぐる日中対立を背景に、安倍政権が南西諸島地域の自衛隊強化方針を鮮明にしている。年内に策定する長期的な防衛力整備の指針「新防衛計画の大綱」などでも、県内自衛隊の役割拡大を明確に位置付けていくとみられる。
県内には現在、陸上自衛隊第15旅団、海上自衛隊第5航空群、航空自衛隊南西航空混成団などが沖縄本島ほか宮古島、久米島に配備され、計7190人が駐屯。自衛隊施設数は復帰時の3から39に増え、県土面積の0・3%を占める。
2014年度予算の概算要求には与那国島への陸自沿岸監視部隊配備に155億円、空自那覇基地への早期警戒機E2Cの監視隊新設費13億円も計上した。13年度予算では、機動展開部隊と連携して突発的事態への初動対応に当たる部隊新設に向けた調査費を計上。配備先は石垣島、宮古島が有力とみられ、尖閣の警戒監視強化へ下地島空港の自衛隊利用も模索する。
防衛省は「沖縄本島より南は陸自の空白地帯。可能なら北の部隊を南に集中したいくらい」と強調する。
日米両政府は自衛隊と米軍の役割を定めた日米防衛協力指針の再改定に着手しており、中国や北朝鮮情勢をにらんで自衛隊の役割拡大を進めている。10月の日米安保協議委員会の共同文書には、南西諸島での自衛隊態勢強化に向けた米軍基地の共同使用推進も明記しており、今後、自衛隊の県内米軍基地使用を本格化させる方針だ。
1日から沖縄や九州で実施している陸海空3自衛隊による離島奪還を想定した実動演習では、米海軍の沖大東島射爆撃場を初めて使用するほか、地対艦ミサイル部隊を本島以外の離島に初めて展開するなど、2年前の同様の演習と比べ県内での展開が増えた。
一方、県内では自衛隊の機能強化は軍事的緊張を高めるとして懸念の声があり、今回の実動演習にも市民団体が抗議している。昨年11月には渡名喜村の入砂島で日米共同訓練が検討されたが、地元の反発で中止された。(問山栄恵)