【島人の目】ゴア氏の影響力


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 「国民の意識が変われば政治家も変わる」という信念に基づき、地球温暖化問題に関する米国民の意識を変えたのがアル・ゴア元副大統領だ。アカデミー賞ドキュメンタリー部門にノミネートされた映画「不都合な真実」のなかで、ゴア氏は、私たち一人一人が真実と向き合い、行動を起こせば、政治家たちを不都合な真実と向き合わせることができると説いている。
 同映画は、温暖化対策の必要性を訴えるゴア氏が世界各地で行った1000回を超えるスライド講演をつづったもので、地道な活動を追いながら、ライフワークの環境問題に真摯(しんし)に取り組むゴア氏の姿がつづられている。アメリカでは最初、大都市で限定公開されたが、反響の大きさから全米公開へとつながり、興行成績ランクトップ10入りも果たした。この映画がここまで影響力を持つ作品となったひとつの要因は「わかりやすさ」。ともすると難解ととらえがちな温暖化問題を政治レベルで論じるのではなく、私たちにもできることはあるんだと解決策を示している。
 アメリカでは、京都議定書を拒否する政府とは対照的に、ロサンゼルスやニューヨークなど自治体レベルで温暖化対策に取り組む動きが活発化し、各市長たちは、車の使用抑制などを柱に京都議定書に定められた米国の排出削減目標の達成に向けて取り組んでいる。
 大統領にこそならなかったが、米国民の意識を変えるという大きな役目を果たしたゴア氏。見る者の心に強く危機感を訴えたこの映画は、意識を変えた国民が政治を動かす原動力へとつながった。今、何をすべきか。地球の未来をどう描くか。一人一人が考える時期に来ている。
(平安名 純代、米ロサンゼルス通信員)