外来アリ、辺野古埋め立て土砂採取先周辺で繁殖


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米軍普天間飛行場代替基地建設に使用する土砂(岩ずり)採取場所周辺で繁殖しているアルゼンチンアリ(環境省提供)

 政府が進める名護市辺野古への米軍普天間飛行場代替基地建設に使用する埋め立て土砂(岩ずり)について、山口県など採取先周辺で、飼育や運搬が法律で原則禁止されている特定外来生物のアルゼンチンアリが繁殖していることが3日、琉球新報の取材で分かった。

環境省の資料によると、海外の繁殖場所ではサトウキビの食害も確認されている。政府の埋め立て申請を審査している県土木建築部は土砂への混入を懸念し4日にも沖縄防衛局へ質問書を送付して対策への説明を求める。
 アルゼンチンアリは沖縄では確認されていない。アリに詳しい辻和希琉球大学教授は「繁殖力が強く、県内に入った場合は沖縄の生態系が変わってしまう。沖縄に入れてはいけないアリだ」と指摘している。
 環境省によると、2013年7月時点で、東京都や神奈川県、大阪府、京都府など20カ所で繁殖が確認されている。沖縄防衛局は山口県防府市向島と同県周南市黒髪島で岩ずりを採取する予定だが、その周辺に位置する岩国市や柳井市、光市、宇部市の4市で繁殖が確認されている。別の採取場所の香川県小豆島についても、北西約25キロの岡山県岡山市で繁殖が確認されている。
 広島県や山口県など2県4市は06年から「アルゼンチンアリ対策広域協議会」を設置し、共同で防除マニュアルを作成するなど連携して対策を取っている。
 環境省作成の「アルゼンチンアリ防除の手引き」によると、このアリは農作物の芽やつぼみ、花などを傷つけることがある。広島県や山口県では「寝ている間にかまれる」「布団がアリだらけになる」などの声が寄せられており、殺虫成分を混ぜた餌を使って一斉防除が定期的に行われている。
 県環境生活部の担当者は「生態系や人身、農作物に被害をもたらす『特定外来生物』であり、もし侵入が判明すれば行政を挙げて対策を取らなければならない」と指摘。環境省自然環境局野生生物課外来生物対策室の担当者は「特定外来生物の生息が確認される場所の土壌などを移動させる場合は、注意が必要だ」としている。(当銘寿夫)

<用語>アルゼンチンアリ
 環境省が特定外来生物に指定しており、外来生物法で飼育や運搬が原則禁止されている。国際自然保護連合の「世界の侵略的外来種ワースト100」に選定されている。1993年に広島県廿日市(はつかいち)市で繁殖が確認され、2013年7月時点で全国20カ所で確認されている。体長は約2・5ミリ。競争力が強く、他種のアリを駆逐した事例が国内外で確認されている。
英文へ→Argentine ants found where earth and sand is to be collected for Henoko reclamation work