【島人の目】アメリカのトイレ事情


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 東京から同級生らが遊びに来たのでニューヨーク観光にお供した。ブルックリンブリッジを歩いて渡り、ブルックリンからマンハッタンの摩天楼の夜景を見る目的で地下鉄に乗った。

 目的地の駅に降りた直後、友人の一人がおなかを下したようで「トイレ」と叫んだ。しかし駅には公衆トイレがないのだ。おなかを押さえて苦しそうな友人と駅を出てファストフード店を目指して、一目散に走った。だが周辺にはそれらしきものはなく、友人は「もう駄目!」と声を上げながらも走り続け、何とかたどりついたコーヒー店のトイレは長蛇の列。最後に並んだ友人は「もう無理!」と冷や汗びっしょり。外に出てわき道を見渡したら近くに一軒のドーナツ屋さんが。走って行ってトイレを確認。運よく誰もいない。そこで友人は危機一髪で事なきを得た。
 セントラル駅のような大きい駅は別としてニューヨーク市のほとんどの駅構内にはトイレがない。外にも公衆トイレは設置されていない。ファストフード店ではトイレを貸さない所があるようだし、自然の生理現象にニューヨーカーはどう対処しているのかを考えると、何となく住みにくい街だと思った。
 さらに友人から「アメリカのトイレのドアはひざ下位まで開いているし、ドアの左右もかなり隙間があって丸見え状態。どうして?」と聞かれた。米国ではトイレはレイプや麻薬使用などの犯罪の温床になるとの理由で、下が開いているのは犯罪防止策だとか。公園のトイレは鍵がなかったり、はたまたドアがない所も。左右の隙間は単なる設計ミスか手抜き作業?
 そして友人らはさらに問う。「なぜアメリカにはウォシュレットトイレはないのか」と。まさにその通り。ニューヨークの有名ホテルにもないようだし、一般家庭でも普及していない。何年か前TOTOがアメリカでのマーケットシェアに力を入れているという話を聞いたことがあるが、なぜか浸透していない。友人らの何人かは日本製は高いので安い韓国製のウォシュレットを取り付けたのだが。一つだけアメリカのトイレの利点を言うと、トイレには必ずハンドソープと、ペーパータオルか乾燥機が付いていること。
 全国津々浦々、公衆トイレが備わり、そしてウォシュレットが普通になりつつある日本のトイレ事情。日本の安心安全の環境とハイテク化したトイレへの気配りは、ともに世界一だと友人らは痛感したようだった。
(鈴木多美子、米バージニア通信員)