どんとの「面影」追う ハナレグミ


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 ミュージシャンのどんとがこの世を去って、27日で14回目の命日を迎える。リアルタイムで知らない人にどんとの世界に触れてもらおうと、5日から宜野湾市のカフェユニゾンで、衣装や楽器などを展示した「“どんと”という情報展」が開かれている。同日のオープニングライブにはハナレグミが出演した。どんとが去って10年余が過ぎた現在も、その音楽は広がり続け人をつないでいる。

 どんとは1962年に岐阜県で生まれた。ローザ・ルクセンブルグ、ボ・ガンボスなどのバンドを経てソロ活動へ。95年から沖縄に住んだが、2000年に滞在先のハワイで急逝した。ハナレグミは、高校生のころに初めてボ・ガンボスを聞いたという。初めてギターを弾いた曲もボ・ガンボスだった。直接会うことはかなわなかったが「どんとさんに今の自分をつくってもらった」と振り返る。
 ライブでは「ひなたぼっこ」などを歌い、優しい声で会場を満たした。「トンネルぬけて」では自然に合唱が起こる。どんとの息子ラキタと一緒に「橋の下」や「夢の中」も聞かせた。ラキタのギターはどんとの形見だ。初々しい声は、野性味と無邪気さがあるどんとの声とは印象が異なるが、目を閉じて歌う姿に面影を感じた。
 ハナレグミは音楽に行き詰まると、どんとの曲を聞くという。「『形じゃない。思いじゃん』と道筋をもらうような気持ちになる」と話す。アンコールの「波」では観客も飛び入りしてフラを踊った。どんとが亡くなった後、フラの指導者サンディーが振り付けたものだ。広がり続けるどんとの世界はまさに波だ。
 どんとの妻・小嶋さちほは「何が起こるか分からない時代だからこそ、どんとの歌が輝きを放つ。生きるヒントがちりばめられている」と話す。ハナレグミが望んだように、来年もイベントを継続してほしい。
 展示会は2月3日まで。命日の1月27日には小嶋やゲスト、観客が一緒にどんとの曲を歌う。対談や上映会もある。問い合わせはカフェユニゾン(電話)098(896)1060。
(伊佐尚記)

「橋の下」や「夢の中」を歌うハナレグミ(右)とラキタ=5日、宜野湾市のカフェユニゾン
展示されたどんとのギターや衣装