地域再生大賞 県内2団体が優秀賞


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 全国の地方新聞社と共同通信社が設けた「地域再生大賞」の第4回受賞団体が決まった。「はやめ南人情ネットワーク」(福岡県大牟田市)が大賞に選ばれた。県内から推薦された「嘉手納町商工会女性部」(嘉手納町)、津嘉山酒屋保存の会(名護市)の2団体が優秀賞に選ばれた。各地が抱える課題を解決する方法は一つではない。幅広い分野から集まった受賞団体の活動は知恵の多様さを教えてくれる。

◆優秀賞・嘉手納町商工会女性部 野国イモで30年
 嘉手納町商工会女性部(當山みゆき会長)は、30年前の女性部発足当初から、嘉手納町の特産品である「野国イモ」を生かした地域おこしに取り組んできた。
 1605年に中国から沖縄に甘藷(かんしょ)を初めて持ち帰り、広めた人物といわれる野國總管は嘉手納町出身。同町は毎年、野國總管まつりを開催し、昨年で33回を数える。
 女性部はまつり当初から、まつりでカンダバー(芋づる)ジューシーを振る舞うなどしてきた。発足当時から活動する金城美代さん(70)は「仕事もしながらみんな楽しんでやってきた」と語る。
 現在では、町内の畑で野国イモを栽培してペーストに加工し町内の業者に販売し、イモを使った特産品の開発に取り組んでいる。
 當山会長は「30年の節目に活動が認められてとてもうれしい。これまで活動してきた先輩たちにも感謝したい」と喜んだ。
 今後は、ペースト加工だけでなく、クッキーなどの新商品を開発中だ。當山さんは「嘉手納に来ないと買えない特産品をつくりたい。これからも野国イモを引き継いでいきたい」と力強く語った。

◆優秀賞・津嘉山酒屋保存の会 「名護の迎賓館に」
 2005年に発足した津嘉山酒屋保存の会(名護市、比嘉伝英会長)は、戦火をくぐり抜けた「津嘉山酒造所施設」の修復・保存を目的に発足した。修復作業が進む今、次の課題は名護市の観光や文化で核を担う施設の活用法だ。比嘉会長(51)は「名護の迎賓館として、文化的拠点を目指したい」と夢を語る。
 県内の酒造所で、戦前の建物を使うのは「津嘉山」しかない。戦後は一時米軍に接収され、建物のはりには「士官用」などの文字も残る。泡盛文化を継承するだけでなく、戦前の暮らしぶりや戦後の足跡も刻まれ、2009年に国の重要文化財に指定された。
 保存の会は不定期で音楽会などを開き、市民に親しんでもらえるよう知恵を出し合う。会員は市外や県外を含め約300人いる。活用へ向けて市民の認知度をさらに高めるのも課題だ。
 比嘉会長は「まちなかにある、地域の大事なものを応援していきたい。津嘉山だけで完結させず、周辺の通りや店舗をつなぐ拠点として、また人がつながる拠点として大切にしたい」と話した。

嘉手納町特産の野国イモで地域おこしに取り組む嘉手納町商工会女性部=23日、嘉手納町商工会
津嘉山酒造所施設の保存・活用へ知恵を出し合う保存の会の会員=24日、名護市大中の同施設