「4分の1は沖縄の血」 直木賞作家・朝井まかてさん


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沖縄出身の祖母の名をペンネームにした、直木賞を受賞した朝井まかてさん=3日、東京都内

 【東京】歌人中島歌子を題材にした小説「恋歌(れんか)」で第150回直木賞を受賞した朝井まかてさん(54)は、祖母が沖縄出身の3世で、「まかて」のペンネームは祖母の名からもらった。3日、本紙のインタビューに応じた朝井さんは「私には4分の1、沖縄の血が流れている。落ち着いて執筆に取り掛かれるようになったら、沖縄のことも書いてみたい」と話した。

 朝井さんの祖母、新里マカテさんは1915年生まれで、兄と共に大阪に出て愛媛県出身の祖父と結婚したが、36歳の若さで胃がんを患い5人の娘を残して亡くなった。当時、朝井さんの母は長女で12歳、末娘はまだ乳飲み子だった。姉妹は曽祖母に育てられた。
 「祖母が早くに亡くなったために、わが家には沖縄の文化がほとんど伝わっていない。でも母の姉妹はとにかく明るくて。祖母の血なのかなと思う」。10年ほど前に沖縄の親戚を訪ねた際、朝井さんの母はサーターアンダギーを見て「おやつに作ってもらった記憶がかすかにある」と懐かしんだ。
 祖父によると、新里家は首里城に勤める役人の家で、琉球処分の後、国頭村宜名真に移り住んだ。祖母の父は先進的で「これからの時代は女も学問をした方がいい」と大阪に送り出した。沖縄には、祖母の末弟の新里紹真さんが存命だという。
 ペンネームは祖母の分まで生きたいという願いを込めた。「沖縄の親戚にも聞いたが、マカテという名の意味が分からない。意味探しはやめようとも思ったけど、分かるものなら知りたい」と言う。
 江戸から幕末の市井の人々を多く描いてきた。沖縄については「薩摩にやられっぱなしだったのかな、とも思うと悔しい。『琉球処分』にしてもそう。そうしたことも調べて、落ち着いたら沖縄のことも書いてみたい」と目を輝かせた。(島洋子)