根路銘氏ら人工ウイルスでインフルワクチン量産へ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【名護】生物資源研究所(名護市)の根路銘国昭所長らの研究グループが12日までに、インフルエンザワクチン製造に必要なHA(ヘモアグロチニン)タンパクを人工ウイルスによって大量に生成する技術を世界で初めて確立した。人工ウイルスを使うことで副作用がない安全、低コストなワクチンの大量生産が可能になる。

ウイルス研究の世界的権威として知られる根路銘氏は、この技術を活用し「沖縄に医薬品開発拠点が誕生することを期待する」と話した。
 根路銘氏らの研究は、毒性を取り除いたインフルエンザウイルスとカイコ、両方のDNAを合成。人工DNAを埋め込んだ人工ウイルスをカイコに感染させると、ウイルスが体内で増殖する。毒性を除き、タンパク生成に必要な情報に特化したウイルスのため、副作用がなく純度の高いタンパクを大量に作ることが可能になる。従来の鶏卵を使う方法に比べ、タンパク生成量が4万倍となる実験結果を得た。
 ワクチン製造では、増殖させたインフルエンザウイルスを分解し、ウイルス表面にあるHAタンパクだけを抽出して、毒性のある部分は取り除く。
 共同研究者の杉田繁夫氏(JRA総合研究所主査)によると、人工ウイルスの技術自体が最近発達したもので、同様の例がないとして「安全性が確保され、安価なワクチン供給が可能になる」と成果を挙げた。
 人工ウイルスは各種ワクチンに応用が利くため、根路銘氏らは中国で流行した鳥インフルエンザH7型や日本脳炎などのワクチン開発にも着手した。
 人工DNAとカイコを使ってワクチン製造に必要なタンパクを生成する技術は根路銘氏が既に開発し、インドネシアの大学と技術提携している。今回は人工ウイルスを使って安全性を確保するなど、さらに発展させた。
(金城潤)

人工ウイルスを使ったHAタンパク生成の仕組み
根路銘国昭氏