五輪の余韻が残るソチで、障がい者アスリートの祭典・冬季パラリンピックが7日(日本時間8日)、開幕する。名護市役所に勤める比嘉優樹さん(32)はカメラマンとして現地に入り、日本代表選手らの熱戦を記録する。
自身も聴覚に障害のある比嘉さんがパラリンピックの撮影に臨むのは2度目で、「障がい者も健常者も変わらない。写真を通じて魅力を伝えたい」と気持ちをはやらせる。
名護市出身の比嘉さんは、乳児期の高熱が原因でほとんど聴力がない。障がい者スポーツに関わるようになったのは、北海道にある大学に通っていた時に、一本のスキー板にいすが固定された「チェアスキー」を見て興味を持ったのがきっかけだ。インターネットを通じて、福島県出身のチェアスキーヤー・鈴木猛史選手と親交を深め、さらに魅力にとりつかれた。
「人とコミュニケーションが取りにくい自分にもできることは何か」と考えた比嘉さんが手にしたのが、カメラだ。写真を通して障がい者スポーツを発信するNPO法人「パラフォト」に所属し、2010年のバンクーバー大会で初めてパラリンピックに“参加”した。
冬のスポーツを撮影する機会がない沖縄。比嘉さんは、一眼レフを片手にプロ野球日本ハムの名護キャンプに通ったり、車いす陸上で活躍する城間圭亮選手(宜野座高3年)の海外遠征に同行したりして腕を磨いている。大事にしているのは選手たちの「喜怒哀楽」を捉えること。競技中の写真だけでなく、スタート時の緊張感やゴール後の笑顔、ライバルとの歓談など、瞬間を逃すまいとファインダーをのぞく。
「一度滑りだせば、障がいから解放される」と比嘉さんは語る。遠征費はほぼ自己負担だが、それでも感動や達成感が比嘉さんを突き動かす。パラリンピックは年々競技性が高まっており、健常者と障がい者を切り分けず「同じように報道してほしいし、多くの人に魅力を知ってほしい」と願う。
ソチ大会には40を超える国・地域が参加予定で、日本はアルペンスキー、クロスカントリースキー、バイアスロンに計20選手が出場する。(大城周子)