【島人の目】ベニス共和国がよみがえる!?


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 水の都として名高いベニスが独立を模索するかもしれない。
 ベニスを州都とするイタリア北部のベネト州で先日、同国からの分離独立を問うインターネット投票が行われ、住民の89%が賛成票を投じた。

 ベニス共和国は、巨大な海軍力を背景に東方貿易を独占して7世紀から繁栄した海洋都市国家。1797年にナポレオンに滅ぼされるまで、1000年以上にわたって経済・文化・貿易の一大拠点として地中海域に君臨した。人類史上、最も長く続いた共和国である。領地は現在のベネト州を含むイタリア本土の東北部とクロアチア、ギリシャ、キプロス島などにまで及んだ。
 ベネト州はかつての海洋都市国家にならって、いわば「ベネト共和国」としてイタリアから独立するとしている。住民投票はベネト州の独立を推進する複数の地域政党が主催。結果には法的な拘束力はないが、主催者は同州の独立へ向けた法案づくりを目指している。
 イタリアが統一国家となったのは、今から約150年前のことにすぎない。それまでは海に隔てられたサルデニア島とシチリア島は言うまでもなく、半島の各地域が細かく分断されて、各自が独立国家として勝手に存在を主張していた。
 イタリアの各地方は今でも心情的にそれぞれが独立国家のつもりでいる。昔のベニス共和国をまねて独立をしようと考えた今回のベネト州の動きがその典型。
 多様性の尊重、というのがイタリア共和国の最も重要なコンセプトだ。それには国が一つにまとまらないという弊害もあるが、自由な発想と精神の開放ももたらすこの国の在り方の最大の美点でもある、と僕は思う。(仲宗根雅則、TVディレクター)