【島人の目】困難排し立ち上がる


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 去年の12月下旬、仲井真弘多県知事が普天間飛行場の県外移設公約を事実上翻して「辺野古承認」をしたというニュースを聞いて涙を流した。本土出身の友人にそれを伝えると、彼らは即座に「なぜ」と返してきた。「沖縄にあれだけ大きな金が入って来るのだから県民にとっては大きな喜びとなるのではないか」というのが彼らの持論だった。

 海外識者29人が辺野古移設反対の声明を発表した。その中のリーダー的存在、オリバー・ストーン映画監督に会ったのは去年の7月。琉球新報ワシントン特派員に同行してサンタモニカ海岸のオフィスを訪ねた。監督はほとんど辺野古について知らないようだった。しかし、辺野古を訪ねた時から監督の視点が急速に変化したことは、多くの沖縄県民が周知の通り。そのことが声明へとつながったものと思われる。
 監督はユダヤ系の父とフランス系の母との間に、ニューヨークで生まれた。ベトナム戦争を題材にした映画「プラトーン」「JFK」「7月4日に生まれて」など社会派として知られ、米政府や政治、経済に批判的な作品が多い。ユダヤ系の著名人は各方面で活躍しているが、映画監督だけでもスティーブン・スピルバーグ、ロマン・ポーランスキー、ストーン監督などアカデミー賞受賞者が多い。ユダヤ系の世界人口に占める割合は0・38%だと言われているが、米国での彼らの活躍は顕著だ。差別の歴史があり、困難な環境を排して立ち上がってきた姿が浮かび上がってくる。
 ストーン監督は「沖縄の米軍基地の過重負担からの脱却」に、ユダヤ系としての差別の歴史を重ねたのではないか、と思った。ネルソン・マンデラ南アフリカ前大統領やインドのガンジー元首相などは、祖国の人民の民主主義獲得のために、差別との戦いに勝利した事実を歴史に見ることができる。もはや仲井真知事に彼らの心情を求めるのは不可能なこと。稲嶺進名護市長なら期待できるのではないか。
(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)