【島人の目】復活祭


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 4月20日はキリスト教の「復活祭」だった。イエス・キリストが死後3日目に復活したことを祝う祭り。英語のイースター。

 キリスト教の祭典としては、そのにぎやかさと非キリスト教国でも祝されるという意味において、恐らくクリスマスが最大のものだろう。が、宗教的には復活祭が最も重要な行事である。なぜなら、クリスマスはイエス・キリストの誕生を祝う日。復活祭は磔(はりつけ)にされたキリストが死からよみがえる奇跡をたたえる日。
 誕生日は誰にでもあるが、死からの再生は、神の子であるキリストにしか起こり得ない。宗教的にどちらが重要な出来事であるかは明白である。
 イエス・キリストの復活があったからこそキリスト教は完成した、とも言える。
 イタリアの復活祭は例年盛況である。例えば、僕の住む北イタリアの村では、キリストが十字架を背負って刑場のゴルゴタの丘まで歩いた「via crucis(悲痛の道)」をなぞって、当時の服装を身にまとった信者が夕方から夜更けまで村の道を練り歩く。大きなイベントである。
 一方、各家庭では復活祭特有のごちそうの嵐。中でも特徴的なのは、生まれたての子ヤギの肉をオーブンでじっくりと焼き上げるカプレット料理。ヤギ独特の臭いがなく、口に入れると柔らかく舌にからんでとても上品な味がする。
 復活祭になぜヤギ料理なのかというと、イエス・キリストが贖罪(しょくざい)のために神にささげられる子羊、すなわち「神の子羊」だとみなされて、復活祭に子羊を食べてイエス・キリストに感謝をする習慣ができた。子羊の肉はやがてそれに似た子ヤギの肉にも広がっていった。
(仲宗根雅則、TVディレクター)