【島人の目】永遠の片思い


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 ゴルフ仲間の一人に70代半ばのすっかり白髪に化した友人がいる。東京出身だが、彼とは毎週土曜日、夜が明けない時間帯から2人でゴルフに出掛ける。その習慣が続いてかれこれ12年がたった。4月12日朝5時半、彼は20歳になったばかりの女性を伴って、「めいっ子です」と紹介した。ヒカリさんという名のアメリカに英語の勉強に来ていて、間もなく東京に帰り、9月にはアメリカの大学に留学するのだという。

 ゴルフが始まった。ヒカリさんはコースに出るのは初めてだった。最初のころは初心者よろしく打球があちこち飛び交い、さらにパターの感覚がいまひとつつかめなかったようだ。ところが最後の方でパー5、510ヤードを3打でオン、「あと2回くらいコースに出るとじいちゃんに勝てるよ」との強い発言には驚いた。
 ゴルフの後、僕の妻も交えて2千メートルのサンゲーブリエル山の上にできたキラキラと輝くクリスタル・レイクへドライブとしゃれた。頂上にはまだ残雪があり、南カリフォルニアの景色の多様性にヒカリさんは「忘れ得ぬ思い出」として心に刻んだようであった。道中われわれはよもやま話に花が咲いた。
 友人は「じいちゃんはヒカリちゃんのことなら何でもする。だから遠慮などしなさんな。なんたってヒカリちゃんは自分にとって“永遠の片思い”だからね」と言ったので、車中笑い転げた。友人はうまい言い方をするものだ。彼は30年前にアメリカへ移住した。お世辞にもハンサムとは言いがたいが、表現が巧妙で、落語家を思わせる話術で「落ち」がうまい。
 将来、事業家を目指してLAで頑張っている東京出身の三井悠加さんに「永遠の片思い」の話をしたら、ほほ笑んで「この話って若い女性にとって、悪い感じはしないのでは」と返してきた。エッセイストやコラムニストは、時にはユーモアも交えつつ、醍醐味(だいごみ)のある文章を目指したい。(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)